彼岸2 ページ2
＿結局言いくるめられて弟者くんも来る事になった
｢ネーズミネズミ籠のなーかのネーズミ？｣
子供の遊び歌、確かこんなのだった筈なのに
遊んだ事が無いから知らないの、少し寂しい
｢Aそれは鳥だよ。でも此処はネズミの住処のような地下牢｣
飽きる程有った甘味も玩具も本も私の心を満たさなかった
記憶に焼き付くのは人の死ぬ音、匂い、異様な雰囲気。血に塗れた両親の手、決して消えない腐乱臭
｢弟者くんはそれで遊んだ事あるの？｣
｢スラムで見たんだ｣
所有する地下牢の環境は郊外のスラムよりも劣悪で生き地獄と形容されるから、頻繁に出入りする拷問班は所謂罰ゲーム部隊なんて呼ばれる
｢Aは何時も此処で仕事してるけど慣れたの？｣
服の袖で鼻を覆う弟者くんの姿を見ると滑稽で笑ってしまう
｢慣れるわよ。幹部様言えども服に匂いが染み込んでるからバーに行っても誰も近寄って来ないの｣
｢他の男に易々と渡したくないよ。だからその匂いのままでいて｣
｢じゃあお嫁に行けなかったら弟者くんに貰ってもらお｣
冗談で言ったつもりなのに
｢嬉しい｣
何で真面目な顔して喜ぶの？
｢A今度さ、ご｣
ある独房の前で足を止めて扉をノックした
｢今日は貴方達よ｣
｢…｣
部下が鍵を開けると、中からもっと酷い匂い
相手方組織全員に手錠して部屋へ連れて行く
｢もう椅子に括りつければ大丈夫よ。有難う弟者くん｣
｢外で待ってるよ｣
｢時間かかるわよ？こんな臭い所で待ってるつもり？｣
多分この人は揺るがないから一度待つと決めたら待つのだろう
｢A様私達にお任せ下さい。折角ですし幹部殿と歓談でも｣
｢…任せたわ。もしもの時は前述の通りよ｣
臭い臭い地下牢の外。狭い空が見える
でもそこはウチの私有地だから出ても問題ない
｢血が…｣
｢白い服はその為よ。構成員に危害が加わった時に分かり易い様に｣
気が付いた出来ていた血の染みが水玉模様見たいで
｢…痛いだろ｣
｢全然｣
体の痛覚も心の痛覚も無い様で
｢…血は薄くとも繋がっているのに、Aの事をよく知らない｣
異曾祖母とでも言うのだろうか詳しくは知らない
｢Aの事知りたいよ｣
血塗れの私を抱き締めてそんな台詞吐くなんて、
｢私も分からない｣
｢同じ血を分けてて一緒に居るのに仕事に精一杯だからね｣
甘い雰囲気をぶち壊す電話
｢ごめんね…何？｣
＿敵方の次期首領の名前が分かりました。構成員愚か保存庫さえも
｢上出来よ｣
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作者名：姫乃 | 作成日時：2019年5月19日 23時
