彼岸 ページ1
この世界は血に染まっている
｢…曾祖父様、敬愛していました。他の誰よりも。願わくばこの組織を何時か私の所有物に｣
棺の淵に手を添えて、徐にその老いた血に塗れた手を握り口付けした
｢Aそれでも次期首領は俺だ。良いな？｣
｢解っていますとも。お父様｣
ニッコリ微笑んで葬式会場を背中に
血塗れた裏社会は男社会だから此の齢で幹部は異例の出世、注目の的
長椅子と長椅子の間の通路を歩くだけで構成員達は私に釘付け
｢…｣
重厚な扉を開ければ外の空気は美味しい
棺に収め忘れた花は空へ投げ、外で待機中の私の部隊を引き連れて目の覚める様な現実へ
｢今日も情報を沢山…ね？その為に頑張るのよ｣
白いワンピを靡かせながら自分よりも遥かに屈強な男達を引連れ歩く
｢A様の仰せの侭に｣
ここは裏社会、私は生粋のマフィアの娘
｢じゃないと幹部で諜報部隊所有の兄者さんに怒られちゃう｣
生まれも経歴も手も何もかも全て血に塗れている
｢曾祖父様にも呆れられちゃうわ｣
｢然し善かったのですか？他の幹部殿は御葬式に…｣
＿＿＿＿此の組織には幹部は7人居る
母は資金調達や経営している賭博施設の管理等を司る部隊を
｢私は好いのよ。確り御別れして来たもの｣
兄者さんは諜報部隊、弟者くんは特攻部隊を
｢さぁ御仕事の時間よ。吐かせる迄は戻って来ちゃ駄目｣
｢手こずったら私を呼びなさい｣
おついちさんは暗殺部隊、私は拷問部隊
｢精々彼の敵風情陳粘らなくとも直ぐに吐くわ｣
父は其れ等全てを統轄した部隊を纏めている。
｢制圧するのもいとも簡…｣
｢俺にも功績上げさせてよ｣
｢え？｣
隣には赤のネクタイが特徴的な特攻部隊
吃驚したけど今回の仕事はどう見ても私達拷問班の仕事
｢特攻する場所なんて無いわよ。それに兄者さんが仰ってたじゃない｣
｢Aは釣れないなぁ。俺は心配してい｣
車に乗り込もうとした所で腕を掴まれて制止される
｢A、遺言は見たでしょ｣
その真っ直ぐな眼で見られると流石に
｢“組織総出でAの事を護ってやってくれ”…確かに曾祖父様はそう書かれてたわ。でも｣
｢気の強い女の子は嫌われるよ｣
私の白いリボンを引っ張って無理矢理キスしようとするものだから、構成員の誰かが弟者くんに銃を向けた
｢誰？今俺に銃を向けたのは｣
｢嫌じゃないわ。大丈夫よ｣
周りを見渡す彼の其のネクタイを引っ張って逆に自分からキスする
｢ほらね｣
｢Aの奔放さには参るな…｣
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作者名：姫乃 | 作成日時：2019年5月19日 23時
