wake up at dawn [green] (ページ46)

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幸せは犠牲の上に成り立つページ46

群がる民衆の外れに、一際目立つ美しい女性とお洒落な男

｢…A！｣

周りの部下からは変な目を向けられる。Aはもう４年前から居ないのだから

｢似た人を見つけてつい…｣

だけど間違いない。仮令間違いであったとしても、声を掛けずには居られない。我慢がきかなくなって、船を降りて人ごみを掻き分け、2人の後を追った先は小さな家で、周りには沢山の花。お金や体裁よりも、幸せの本質を知っているかの様な家

｢ねえ、おついちさん。今夜はラザニアにしましょ？｣

｢じゃあ一緒に買い物に行こうか、A｣

仲睦まじく手を繋いで歩く男女の後ろ姿

俺は一瞬で確信した。あれはAに間違いないと

｢…っ、Aッ！！｣

男女は肩を跳ねさせて、振り向いてくれた

…ああ、Aだ

｢…Aッ！！本当に会いたかった…｣

Aを抱き締めようとする俺の前にはあの執事

｢僕の妻に何か様でも？｣

…妻？

｢…弟者さん、この事は秘密にして欲しいの。全てを捨てても欲しかった幸せが手に入ったから｣

泣きながら嘆願するAの姿に、驚いた

｢…A、本当に亡くなった事になってて…Aの本まで出てて…俺は…｣

涙を枯らすまで泣いて、Aは実は許嫁で…どうしたら正解なんだろうか

｢おついちさん以外何も要らない！お金も名声も権力も要らない…｣

表情に華麗な令嬢の俤はあっても、俺に嘆願する姿に俤は無かった

｢…ごめん。Aとおついちさんの幸せを壊すつもりは無くて、Aに会いたかったから無理矢理会いに来ちゃった｣

Aに向けられる顔が無い。俺は自己中心的な行動をしてAを傷付けた

｢…貴方を本当の兄の様に慕っていたわ。だからこそ、高尚で有り続けて…自己中心的なわたしの事は忘れて｣

｢忘れるなんて出来ねえよ…A…｣

｢もう此処には居られないわ…遠くへ行かなきゃ｣

｢誰にも言わないから、遠くに行くなんて言わないでくれ。Aが元気で、幸せであるならそれで十分だ…｣

正解なんて無いと思うけれど、きっとこれが最適解

全てを捨てて、駆け落ちしてまでお互いに愛し合っている二人の世界を壊すのは、令嬢だった頃のAへの背徳行為

｢…ごめんなさい。ありがとう｣

｢A、もう行くね｣

これ以上ここに居ると胸が張り裂けそうで、会えるのに会えなくて、居ないのに居るのだから、この苦しみは一生呪いの様に俺に纒わり付くだろう

嘗てAとおついちさんが呪いに苦しめられた様に