wake up at dawn [green] (ページ44)

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幸せは小さな秘密の鳥籠の中でページ44

｢新しい紅茶なのよ｣

紅茶をゆっくり掻き混ぜる貴方を湯気越しに見つめると幸せとはこうでなくっちゃ！と思ってしまう

｢香りが良いね｣

その嬉しそうな顔を見るのが嬉しいの。その為ならなんだって頑張れる気がするわ

｢久し振りに海にでも出掛けましょう？｣

おついちさんとの幸せを手に入れてからは、一般的なお掃除も家事も出来なくてとても迷惑を掛けてしまったけれど、今では中々ものになってきて

｢良いね。僕も行きたいと思ってた｣

｢それならピクニックはどうかしら｣

今でも変わらずにお花を持って来てくれて、お互いに贈り物もするし、機嫌が良ければステップを踏んでしまうから、わたしたちの関係だけは変わっていない

｢サンドウィッチを持って行こう｣

変わったのは2人でキッチンに並んでサンドウィッチを作ったりする様な、協力しながらの楽しい生活。それが永遠に続けば良いの

それ以外は何も要らないのだから

寧ろそれを守る為ならなんだって遣ります

愛の名の元での正義は許される気がします

外は暑くて、良い天気

海沿いは心地よい風が頬を撫でる

おついちさんと来れてよかった

｢…人混み？｣

突如港の方を見ると沢山の女性。この国の王子がやって来ると言われてもこんなに集まることは無い

｢凄く沢山の人達ね、何かあるのかしらおついちさん｣

｢いいや、僕も分からない｣

民衆が目を向ける先に目をやるとよく知っている顔だった

｢…弟者さん｣

｢A、今すぐ逃げよう｣

嬉しくて涙が溢れてきたのと同時に焦りを覚える

向こうが気が付く前に逃げなきゃ

｢おついちさん…！｣

わたしとおついちさんの幸せな鳥籠を壊さないで。命は奪われてもいいわ。だけどわたしからおついちさんだけは奪わないで…！

握る手に力が入る

雑踏を掻き分けてわたし達はお家へ戻った

息を切らせて肩を弾ませながらお互いを離さないようにひしと抱き締め合って、安堵の海に溺れた

｢…大丈夫、きっと大丈夫。Aと僕の幸せな暮らしはこれからも続くよ…大丈夫。簡単には壊させない｣

｢おついちさん…おついちさんと居る為なら何にも惜しくないわ｣

わたしが小さく泣くと、愛おしいおついちさんの手が自分の髪を通る。それが堪らなく好き

｢僕もA以外要らないよ｣

彼も小さく泣く

だけど多分、多分、向こうは気が付いていないだろう

＿＿＿＿だってわたしは今年で22になるのだから