wake up at dawn [green] (ページ32)

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＿あと12日ページ32

未来を案じると見えない不安で胸が張り裂けそう

｢A様、未だ眠れないのですか？｣

｢ちょっとした不安で…眠れないの｣

寝台の淵に腰掛けて、僕はA様の髪を頬を撫で、首筋から鎖骨にかけて手を滑らせた

｢…眠れないじゃない｣

恥ずかしげに布団の中に潜るお嬢様が可愛くてもっと苛めたくなった

｢そうでしたか｣

今では逆だったのに

｢押し潰されそうだから、一緒に眠って欲しいの｣

真逆のお嬢様からのお誘い

ノーと言う訳が無いが逆に眠気が覚めた

｢分かりました。15分程お待ち下さい｣

急いで自室に戻り、寝間着を片手にA様の部屋へ

途中で誰ともすれ違わなかったのが幸い

扉に鍵を掛け、窓にはカーテン

これはまだ秘密の恋

｢寝間着のおついちさん初めて見たぁ｣

半分眠たげな声で嬉しそうに言われると悪い気はしない

｢お嬢様、僕も執事とは言え一人の男ですからね｣

半分自分はあくまでも執事だと言い聞かせる為、半分はA様に警告する為に言い、その寝台に躰を横たわらせた

｢…ムスクの良い香り｣

A様は胸板に顔を埋める様にして抱き着き、僕はお嬢様の背中に手を回した

｢暫くはお独りにさせてしまいますが、必ず貴女の元へ戻ります｣

脆い体躯に少しでも力を入れたら折れてしまいそうで壊れ物を扱う時の気持になる

｢A様を一生離しません｣

服を掴まれる力が強くなる

｢…A様じゃなくてA｣

何れ敬称が不必要になるのは理解していたが、求められると困る

｢…A｣

｢おついちさん…月が綺麗ですね(愛しています)｣

｢無論、海も綺麗ですよ(貴女に溺れています)｣

明日の無い恋人の様に僕達は抱き合って

甘美な夜を過ごし、朝を迎えた