wake up at dawn [green] (ページ31)

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＿あと15日ページ31

街の女の子に服を配ったのは、どの服を持っているか把握されない為

貴族院に喧嘩を売ったのは、夭折する理由のひとつにする為

インフラ整備の話を急遽始めたのは、他の道の交通量を増やして紛れやすくする為

お嬢様は政治でさえも利用していたと、今その愛おしいA様のお口から告げられた

｢…もうわたしは、おついちさんの思う様な高尚なお嬢様じゃないの｣

｢それで良いのです。安心しました、A様の様なお方と僕なんて…と思っていましたし｣

本当にそう思うが、真逆そこまでだとは思わなかった

改めて僕は全てを背負っていると痛感する

｢もうやり残した事も無いから、これからゆっくり令嬢としての最期の時間を一緒に過ごしましょう？｣

｢お嬢様がそう望むのなら悦んで｣

僕らは家の薔薇園でティータイムを楽しんでいた

薔薇が、A様が綺麗で、この世界の全てが美しいのではないかと錯覚した

ケーキスタンドにはいつも通り、スコーンとサンドウィッチとミルクレープと苺のケーキ、今日は特別にラズベリーパイ

紅茶はローズヒップ

お嬢様は白のワンピース、僕はベージュの燕尾服

薔薇園は茨のアーチが有りそれを潜れば綺麗な花達が見えるのだが、まさに僕らの恋のようだった

｢お天気も良くて、おついちさんも変わらずお元気で、紅茶もケーキも美味しくて、薔薇も綺麗で幸せな時間ね｣

幸せと感じる要素のひとつに僕が入っているそれだけで十分幸せ

｢A様が居るだけで僕は幸せですよ｣

紅色の薔薇(死ぬほど恋焦がれる)が印象的なこの季節は、風がその甘い香りを運ぶ

ふと遠くから誰かの足音が聞こえ、普通のお嬢様と執事に戻る

｢A様、お客様で御座います。隣街の兄者様と弟者様が｣

｢ここへ呼んでくださる？｣

椅子が2つ増やされ、ケーキスタンドやティーカップも新たに増えた

足音が又聞こえ、見れば騎士は花束を持っていた

｢A、これ上げるよ｣

｢いつも頂いているのに良いの？｣

よく見たら、棘がなく(誠意)、ピンク色の薔薇(可愛い、愛の誓い)、それも御丁寧に美しく束ねられた21本も(君だけに尽くす)

｢弟者毎日贈ってんの？｣

偶然か分からないが意味のある花束に驚いた

不器用そうな男が器用な事をするのだなと

｢そうだけど｣

鼻の下を指で掻きながら言う姿に、罪悪感を覚えた

だけどA様は誰であってももう譲らない

君が21本上げたのなら、僕は999本の薔薇(生まれ変わっても君を愛す)