＿あと33日 ページ25
A様はこの街の女の子のファッションアイコンでもあった
｢お嬢様と同じような靴が人気らしいですよ。ほら、あの女の子とか｣
僕らは街を歩くとすぐさま注目の的で、特にお嬢様のお召し物もそのひとつだった
｢お洒落は女の子を幸せにしてくれるわ。更におついちさんの様なお洒落な男性が居らっしゃるとより一層ね｣
お嬢様は恋と勉学とお洒落と芸術を愛した
｢A様が政治の一翼を担ってから街が明るくなった｣とか、｢A様のお陰で女子の地位が向上した｣なんてよく聞く話だ
｢お嬢様、先日の舞踏会のお召し物は中々良い評判でございましたよ。ご主人も大変喜んで居られ、つい僕も鼻が高くなってしまいます｣
｢好きな事で褒められる事はとても素敵ね。矢張りお洒落は皆を幸せにするわ｣
今日は丸襟で袖の膨らんだの赤のワンピースに白靴下、黒のストラップシューズ、白いレースの手袋、僕が仕え始めた頃に贈った椿の髪飾り。おまけにシトラスの香りを纏っておられる
｢お嬢様、本日も素敵です｣
｢貴方に褒めて貰えるから余計楽しくなってしまうの｣
＿＿＿＿｢全ての女の子にお洒落を｣と掲げたお嬢様は、所有する殆どの服や靴、アクセサリーを無償で城下の女の子に上げた。どれも新品同様で、値段はそれなりにするが、服はどんどん増えるから困る一方だった
それに服が可哀想だから欲しい人が持っておくべきと考えられ、この街の女の子の憧れであるA様の所有物だったものは、山のようにあったが忽ち無くなってしまった
｢A様は矢張り行動力が有り、皆の心に寄り添われる素敵なお方ですね｣
｢皆が幸せならそれで良いのよ｣
A様が嬉しそうに僕を見つめる
その瞳が余りにも綺麗な為に吸い込まれてしまいそうで、どうしたら良いのか分からなくなってしまう
そして｢伯爵令嬢様、この前は本当にありがとうございます｣や、｢A様は憧れです｣、｢服のお陰で毎日が楽しくなりました｣なんて、今日だけで何回言ってもらえただろうか
何故この様なお方が僕を愛して下さっているのか本当に天文学的数字な位奇跡ではないのかと思った
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作者名：姫乃 | 作成日時：2018年8月1日 3時
