＿あと36日 ページ24
お嬢様が接待をしていらっしゃる間、A様の可愛がっている花に水をやっていたら人の気配がした
｢お嬢様に情を入れすぎよ｣
あのメイドからの忠告は何回目だろうか
｢何故？｣
｢…出会って2ヶ月であんなの有り得ないわ｣
吐き捨てる様に言われたその言葉は中々僕にとっては鋭利な刃物となった
｢お嬢様と僕は波長が合うのですよ｣
｢…そう｣
｢何故貴女はそんなにも…？｣
…怒っていらっしゃるのですか、は流石に失礼だから控えよう
メイドは肩を大きく弾ませながら、僕の顔を凝視してくる
｢っ…決まっているじゃない！貴方が好きだからよ！！｣
顔を真っ赤にして泣きながら伝えられた愛
僕はA様を愛しております、一人の男として
然し断るのだから言葉は間違えない様にしなければならない
｢…僕はその気持ちに応えられない…ごめんね｣
断る事に何とも思わかった自分に怖気付く
｢仮令君の気持ちに応えてあげられたとしても、僕には仕えるべきお嬢様が居るから…｣
真っ当な理由だろう
｢…良いんですごめんなさい｣
泣きながら部屋を出て行った彼女とこれからどう接すれば良いのだろうか
｢…いちさん……おついちさん？｣
可愛らしく僕の顔を覗き込んでいたA様に気が付けなかったのは迂闊だが、さっきのメイドのその後が気になって仕方が無かった
｢お、お嬢様！！｣
｢何かあったの？｣
｢実は…｣
A様は笑顔で頷きながら聞いてくれるのが何とも心地良くて、改めてこの方と一緒に居たいと思った
｢わたしも気を付けるわ。失恋は下手したら死に至る病だもの｣
A様が1番よくわかっている事なのかもしれない
｢お手を煩わせてしまい申し訳ございません｣
屈託のない笑顔で言われると安心する
｢良いの。それよりも明日はこの街の学校の視察の公務だから、一緒に行きましょう？｣
｢お嬢様がそう望まれるなら｣
｢おついちさん疲れているみたいね。今日はのんびりカヌレでも食べましょうか｣
お嬢様は嬉しそうにカヌレを持ってきて下さる
｢美味しそうですね｣
｢大好きなの。この街のカヌレは美味しいのよ｣
自慢げに話すその姿に、矢張り統治の才がある事を実感させられる
民衆の幸せはこのお嬢様が作って下さって居るのですよ、とお嬢様の事を知らない方に知らしめたい程に
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作者名：姫乃 | 作成日時：2018年8月1日 3時
