＿あと99日 ページ3
｢A様お早う御座います。良い朝ですよ｣
僕はA様の自室のカーテンを開け、紅茶を淹れた
｢ありがとう、貴方の事何て呼べばいいかしら？｣
お嬢様は眠たげに目を擦る
その一挙手一投足が愛おしく感じた
｢おついちと申します。御自由にお呼びください｣
仕えるお嬢様に2日目にして感情が入ってしまう等今までに無かった
｢じゃあおついち“さん”ね｣
大層変わったお嬢様だこと
｢使用人に“さん”は不必要かと…｣
｢貴方わたしの恋愛の無い絶望した人生に終焉を齎してくれるもの、それも若いままで｣
夭折を望むお嬢か…
どのお嬢様も皆不老不死を望み
僕は除け者扱いされた
｢何故そこまで恋愛に執着なさるのですか？｣
｢浪漫溢れて素敵でしょ？でも恋愛は結局物語の中だけの物なのよ｣
儚く微笑むA様に危うく心を奪われる所だった
僕はA様の命を奪うかもしれない存在なのに
｢でも素敵ね、今恋をしたら3ヶ月後には恋に生きて恋に死 ねるのよ？｣
｢貴女様が呪いを肯定してくれた唯一の方に御座います｣
A様は紅茶をお召になり、僕は朝食を運んだ
｢おついちさん、お花が欲しいから一緒に温室に行って欲しいの｣
珍しく座ってと言われて、お嬢様の向かいに座る
本当に変わったお嬢様だ
｢それなら僕が摘みに行きますが…｣
｢とても綺麗だから一緒に見たいの、何時も独りだから｣
除け者扱いされたモノクロの人生に色が付く
｢畏まりました｣
僕は初めて笑顔が零れた
｢笑顔が素敵ね｣
｢A様困りますよ｣
褒められる事に慣れていない僕は顔を赤くした
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作者名：姫乃 | 作成日時：2018年8月1日 3時
