＿あと60日 ページ16
｢美しい横顔ですね｣
A様と僕は、ポートレートを描く為に庭に出た
僕は少年の時に絵の手解きを受けて以来すっかり虜になっていて、執事の家で無ければ画家になろうと思っていた程だったが、今では執事でよかったと思う
｢図書室に飾られている肖像画の方々も擽ったい気持ちで居たのかしら｣
｢そうかもしれませんね｣
僕は必死で鉛筆を動かしながら、A様を見つめる
｢皆美しいから、褒められる事も日常茶飯事かもしれないわ、やっぱり分からない｣
A様は不服そうに言うが、僕は勿論何があってもA様が中心であり全てであるので、他の娘など眼中に無かった
｢A様が1番ですよ｣
｢出来たら図書室に飾るの。禁忌を犯すなんて関係ないわ、おついちさんとわたしの思い出をひけらかすの｣
とても嬉しくなり、色まで付けてしまおうかと思った
｢素敵ですよ｣
｢そろそろ休憩にしない？ロイヤルミルクティーが飲みたいの｣
｢畏まりました、お嬢様｣
A様も僕も伸びをして、同じ行動に笑ってしまった
｢おついちさんは待っていて、他の方に頼むわ｣
2人で噴水の端に腰掛けて味わうミルクティーの味は格別だった
｢A！おついちさん！｣
遠くから若き騎士の君の呼ぶ声がして、僕達は振り返る
｢弟者さん如何して此処に？｣
｢近くに寄ったから遊びに来たよ。Aのポートレート？素敵だけど…良いの？｣
僕の腕によりを掛けた自慢のA様の肖像画
｢素敵だから良いのよ。兄者様は？｣
｢兄者はもう少しで来るよ、俺もミルクティー欲しいんだけど…あと、兄者の分も｣
｢兄者様も居らっしゃるのね！嬉しいわ｣
僕が居なくて来ると知ったらこんなに喜んで貰えるだろうか
｢お嬢様続きを致しましょう｣
僕は嫉妬からついポートレートの続きを始める
｢出来たら図書館に飾るの？｣
｢皆様に見せ付けるのよ。わたしとおついちさんの想い出を｣
｢おついちさんは幸せ者だな〜。兄者なんて毎日メイドを困らせてるよ｣
確かに僕みたいなのは稀だ
A様の横顔は愛おしくかの美術史における美少女の絵画と引けを取らないくらいではないかと思ってしまう程に
｢将来は美術館に飾られると良いですね｣
僕の愛は永久不滅だ
｢そうね、呪いのポートレート展でも、この家の肖像画だけを飾る展覧会でも素敵ね｣
｢それなら色を付けますよ。A様の肖像画が一番目立つように｣
この耽美で甘美な時間が永遠に続けば良い
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作者名：姫乃 | 作成日時：2018年8月1日 3時
