【小説版】集えや集え！ヒーロー&敵！《Ⅱ》 (ページ48)

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微睡みを眺めて【語部唄/松野空松/(松野おそ松)】ページ48

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『誰デスか?アナタ』
「誰でもいいだろ～?ここにそらまっちゃんいんのわかってんだからね?」

Ms.松野とかなり似ている赤いパーカーの男性がアジトに入って来ていた。

BARの高い椅子に腰掛け煙草を吸う男性。

その寛ぎ様はここは自宅だと言わんばかり。

……奥から聞こえた音が、なにか試合前のゴングのように思えたのは秘密だ。

「兄貴…」
「おっ!!空松ぅ～♪兄ちゃんお前になかなか会えなくて寂しかったよ～♪」

なるほど、Ms.松野の兄上でしたか。

「───ぐぁはっ!!」

……駆け寄った先でMs.松野からボディブローを食らっている所を見ると兄という事実(威厳)は微塵も感じられないのだが言わない事にしよう。

「兄貴、弟達はどうしたんだ。まさか、置いてきたりなんてしてないだろうな」
「当たり前だろ！？」

大音量が耳に痛いデスねェ……

この際二人とも殺してしまいまショウか?

……それではMr.松野の信念を踏み躙ることになりマスね……止めにしまショウ。

「ハーメルン、悪いけど2人にしてくれないかな?」
『わかリマシた』

無意識なのだろう溜息を吐いた後、Ms.松野は私に退出を要求した。

願ったり叶ったり。

私は笑顔(かめん)を着けて歩き出す。

『……ごゆっくり?Mr.松野』

退出する時にそう小さく呟くのを忘れずに。

…… …… ……

『……危機感が無いのデショうか』
「殺|すなよ?」
『まさか。この子には信念がありマスから殺しはしマセンよ』

死柄木サンの膝の上に頭を乗せる形で床に座り込んでいる妹君。

こうして見てみると、寝顔は年相応のあどけなさを帯びている事が分かって、何となく心が潤ったような気がしなくもない。

「……見んなよ」
『おーおー、怖いデスねェ……男の嫉妬は見苦しい、デスよ』

その相手が女なら尚更デスよ死柄木サン?とまた仮面(えがお)を張り付けたまま問う。

小さく舌打ちをする死柄木サン。

ちなみに死柄木サンは寝ている彼女の前ではあまり大きな声を出していないのだ。

それぞれの手の人差し指には包帯が巻かれ、優しく皆生さんを撫でる手は既に家族が対象のそれではない。

『……それがきっと一番の光であり闇なんでしょうね』

妹君はどのようにして送り返しましょうか、なんて頭で考える。

……ちょっぴり死柄木サンを騙して、あの赤いパーカーの彼に送って貰いマショウか。

「お前が好きだ、尚生……」

囁くように呟かれたその言葉に、気付かないフリをした。