【小説版】集えや集え！ヒーロー&敵！《Ⅱ》 (ページ46)

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その首を絞める勢いで、だきしめて【死柄木皆生/語部唄】ページ46

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あの後、僕は賭けに勝った。

……勝った、のだけれど。

やっぱり眠らされてたよね……

ここに来るまでの事が全然思い出せない。

多分あの蛍光色の人の"個性"なんだろうけど、その"個性(ちから)"の出処が分からない事には対策出来ないからなぁ……うーん……

「───あいつが!?」

お兄ちゃんの声だ!!

かなり低くなってるけど、間違える訳が無い……!!

『───ッお兄ちゃん!!わたしだよ!"尚生(なお)"!!』

「……アナタ本名じゃなかったんデスね」

やっぱり、とか言いながらわたしをお米様抱っこ(ちゃんと顔は前側だ)して連れて行く蛍光色の人。

「おいハーメルン、下ろして縄を解け」
「ハイハイ、今そうしマスよ、っと」

わたしを(お兄ちゃんがいる手前だからだろうか)優しくソファに下ろして縄を解く…ハーメルン(蛍光色の人はそういう敵名らしい)。

『お兄ちゃん───』
「尚生!!」

駆け寄り、思いっ切り抱きつく。

ここが＿少人数とはいえ＿衆目の面前なんて事は気にならない。

感動の再会、と言いたいところだけれど。

でも。甘える前に、泣く前に。

まず伝えなきゃいけない事がある。

『───のバカ!!』
「はぁ?!」

会心の一撃。

わたしを抱き締めたまま硬直するお兄ちゃん。

ただ、両の手の五指のうちそれぞれ一つはついていない辺り、わたしの推測は幼いながらに当たっていたらしい。

なるほど、指が全部ついたらいけないんだ。

冷静にそんな事を考えている自分も嫌になって、はじめて一筋、涙が零れた。

"あの日"以来の、涙が。

『…おいて、いかないでよ』
「尚生……?」
『お兄ちゃん、わたしを置いてどっか行っちゃったじゃない……』

涙を止められない。

隠そうとお兄ちゃんの肩口に顔を埋(うず)める。……どうせ隠せないだろうけど。

黒一色の服が、より真っ黒に染まっていく。

『まってて、って…いったっ、のに……っ』

ばか、と弱い拳を叩き込む。

あほ、と再び拳を叩き込む。

まぬけ、と三度の拳を振り上げて。

『……っ』

振り下ろす事が、出来なかった。

『ぅ……うぅぅ……』

視界は黒一色。涙一色。

『ばか…お兄ちゃんのばかぁ……!!』

敵になんてなって欲しくなかった。

まして、ひと(ヒーロー)を憎むようになんて、なって欲しくなかった。

『てきにっ、なんて…ッなりたく……なかった……!!』

ただ一人の家族(お兄ちゃん)を引き止めるように、強く、強く。