冬の約束

12 新たな試練 ページ16

あのあとも結局大ちゃんは現れず、一日が終わってしまった。

昨日帰り際にあのタヌキが倒れてたところを通りかかった時、キラリと光るものをみつけたんだ。
それは瓶底メガネだった。
たぶん絶対大ちゃんのだ。あんなのかけてるやつ他に居ないもん。
すぐに拾って大事に持って帰って、きっと無いと困るんだろうと思って今日ちゃんと持ってきた。
今日はちゃんと来るといいな大ちゃん…
昨日は一体どうしたんだろほんと





「それやめろって大貴」
「でもぉ、かみさまが付けてろって…似合う？｣
「にあわない。ぜんぜん｣



ちょうど学校の校門をくぐったとき、ふと聞き覚えのある声がして顔を上げると前を行く2人がいた。大ちゃんと薮先生。
声をかけると同時に、振り向いた大ちゃんの姿に驚愕


「あっ大ちゃん！だっ…だいちゃん？！｣


「あーいのちゃんっ！｣
「おぉいのおくん、おはよう｣
「大ちゃんなんでグラサンかけてんの…｣


にこやかに挨拶する薮先生の隣に、グラサンをかけた子供がいた。なにこいつ…

「変だよな。やめろって言ってやってよ｣

聞かないんだよねってため息ついて、いや教師なんだからさすがにこれは止めさせろ。絶対ダメだよこんなかっこで学校来たら…

「おれだって見えにくくてやだけど、メガネなくしちゃったから代わりだって……｣

「あっメガネ…これ大ちゃんのでしょ？昨日拾った｣

カバンをゴソゴソして瓶底メガネを取り出すと、あーっ！ってでっかい声でリアクション

「それ俺の！！よかったぁ〜ありがとういのちゃん…｣
「グラサンやめなよほんと｣
「うん、これ返さなきゃ…かみさまのだから｣
「え？神様？｣
「えっ！あっ！なんでもない!!!伊野ちゃんはやく行こ！｣
「えっ！うわ引っ張らないで大ちゃん！｣


足速すぎなんだよ！！！！
腕を引かれて猛ダッシュ
後ろから薮先生の「校内は走るなー｣って呑気な声が聞こえた。

13→←・

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す