7:轟の初恋 ページ10
轟side
俺はただヒーローになるために雄英に入ったのに……別に友達作るために雄英に入ったんじゃない
なのに………
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思えば今日の朝……
芦戸:｢おっはよー切島！珍しく早いじゃん？｣
切島:｢あっ、あぁ。その、まぁ、たまたまな……｣
芦戸:｢ん？教室行かないの？誰か待ってるの？｣
切島:｢あっ、えっと、すぐ行くから……｣
芦戸:｢ふーん、そっか｣
下駄箱前から聞こえてくる会話
"硬化の奴"と"毒の奴"だ
なぜ学校に入らないのか不審に思ったが俺は無視して教室へ向かった。
途中、｢おはよう轟｣と聞こえたが、小さく会釈して通り過ぎた。
教室に着いた俺はなんとなく窓側に足を運び、昇降口から入っくる生徒を眺めていた。
『っ！』
風が吹いた。春の優しい風だ。いや、窓は空いていない。でも、優しい風が確かに吹いた
『神々廻……A……』
口に出して、しまった！と思った。すぐに口を塞ぎ、教室を見渡す。幸運なことに、各々が話に花を咲かせているようだった。
俺は一安心して視線を"彼女"に戻した……が……
｢切島…………｣
さっき下駄箱でのろのろ上履きに履き替えていたアイツが、今度は靴に履き替えてAの元へと向かう
手を振って、笑顔で駆け寄るアイツに、笑顔で手を振り返すA。明るい春の日差しのような二人を見て、心に黒いもやがかかるのが分かった
｢アンタ恋とかしたことないの？｣
姉に言われた言葉を思い出す。恋…たった今しているのが恋だ。
あの冬の日、テレビで初めて彼女を見た時、温かい春風が俺を包み込んだ。一目惚れと言うやつだろう。そして俺の初恋だった。
入学して10日たった頃、彼女が入学してきて、クラスがざわめいた。俺も別の意味で心がざわついた。
でも、雄英にはヒーローになるため来た。彼女に近づけても、せいぜい"友達"か"エンデバーの息子"扱いになるだろう。
俺は、生まれた時から親父に、"特別"扱いされてきた。悪い意味で……
でも彼女は、生まれた時から良い意味で"特別"扱いだった……
俺と"真逆"だ。でも、そんな彼女を羨ましいと思うよりは、尊敬した。
｢ヒーローになりたいと言ったら親に怒られた｣と雑誌で言っていた時は、俺も彼女と"同じ"になれるだろうかと思ったものだ……
神々廻A……切島鋭児郎に取られる訳にはいかない
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作者名：クテシフォンらるるん | 作成日時：2020年12月9日 17時
