19:切島君とデート ページ22
切島side
今からAちゃんと遊びに行く訳だが
恐竜博物館……どうして俺は水族館とかカフェに誘わなかったんだろう。俺のバカ！
｢……君、…島君、切島君！｣
『えっ？A……ちゃん？』
｢大丈夫？ぼうっとして……具合悪いの？｣
『いや、悪ぃ考え事してた。それより今日、恐竜博物館でいいのか？』
｢うん！切島君の好きな所に行こう！私、そういう所行ったことないからとっても楽しみなの！｣
あぁ、"好きだ"
でも、午前中は轟といたんだよな。何をしたんだろうか。何をして何を話して何を見て何を感じたんだろう。
俺は笑みを返しながら、嫉妬に染まる感覚になった
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
博物館はとても楽しかったが、見たかった恐竜はあまり覚えていない。覚えてるのは、Aちゃんの楽しそうな顔。嬉しそうな顔。驚いた顔。真剣な顔。時折見せる笑顔だ。
誰にも渡したくない。誰にも見せたくない。この表情も独り占めしたい。一緒に居たい。
いっそ、告白してしまおうか。一瞬、そんな考えに襲われたが、
｢私、切島君のような"友達"がいて良かった！｣
頭から氷水をかけられたような気分だ。唐突な友達宣言は、俺を落ち込ませるのなんて容易の事だった
｢彼女だってヒーローになるためにここに来ているんだから、邪魔しちゃいけないよ」
根津校長の言葉がリフレインする。
あぁ、俺のこの感情をぶつけたら、彼女に迷惑がかかる。でも、分かっていても、俺はこの気持ちを諦めきれそうになかった
｢友達……か。そうか、ありがとな！俺もAちゃんみたいな友達がいて良かったよ｣
上手く笑えているだろうか。精一杯の笑顔を彼女に向けると、彼女も笑顔を返してくれる。
あぁ、やっぱり諦めきれない。
だってこんなにも"好き"になっちまったから
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
時が過ぎるのはあっという間だった。明日から学校だと思うと憂鬱だ。
ヒーロー志望のくせに、何言ってんだ？って自分に毒つきながら、ベッドの上で目を閉じる。瞼の裏では午後の事がリピートされる。思い出すのはAちゃんのことばかりだ。
｢ヒーローになりたい癖に……何やってんだか｣
天井に向かって呟いた声は、酷く掠れていた
切島君とデート(完)
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 5人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：クテシフォンらるるん | 作成日時：2020年12月9日 17時
