42話 ページ43
「あのですね」
面と向かって話しにくかったので、私はキヨさんに背中を向けている。彼は私を抱き抱えて、後ろから私のお腹に手を回している。
「うん」
ひかるくんに、キスされて、嫌だったことを、改めてポツポツと話し始めた。
ただの、汚い愚痴だ。
意外と、お腹も満たされて、お風呂も入って体もポカポカになったお陰が、冷静になっていて、もう泣くことはなかった。
「………うん、………うん、」
キヨさんは私の一言一言に律儀に返してくる。
「ひかるくんから好意を寄せられていたのはわかってたんです。1年の時から、彼は私へのアピールが凄くて、一時期付き合ってる説が浮上して」
「……ああ」
「でも私、去年は目のこともあったし、人とのお付き合いは無理だって合コンの件で痛感したし。音楽しか無かったから、全部無視してたんです。受け流したり、適当にはぐらかしたり、誤魔化してたんです」
その態度が彼にとって辛かったのだろうか。でも、彼はそんなのを表に一切出したことがないし、寧ろ燃えるタイプな気がする。
そして、あの行動を引き起こしてしまったのだろうか。
「全然わからないですけどね」
そう、全ては自分の予測でしかない。
それに、予測するだけ嫌なことが思い出されるだけだ。
はあ、と息を吐いて、私はお腹に回されているキヨさんの手に、自分の手を重ねた。膝に乗せられてるため、キヨさんの体温が近くに感じられて、今は少し恥ずかしい。
「………前に、俺がAに凄いやつって褒めた時に、お世辞とかって言ってたの、覚えてるか」
「カフェにいった時ですね」
もちろん覚えている。
「すごいなぁ、って今、改めて思ったわ」
「どうして、ですか」
お世辞、とはもう一度言えなかった。
キヨさんは私の肩に自分の額を乗せた。
「自分を責めて、人のこと悪く言わねえし、しかも、もう引きずってないんだろ?」
とん、と心臓の辺りを指でさされる。
「………傍観者になって、脅すしか出来なかった汚い俺に比べたら、お前はずっと、すげえやつだ」
ばっ、と後ろを振り向くと、キヨさんは苦しい顔をしていた。
「……ごめんな」
「どうしてあやまるんですか」
「キスされる前に、助けたかった」
泣きそうな顔をしてるキヨさんを見ていられなかった。
「……でもな、俺」
くしゃりと笑うと、キヨさんの瞳から涙が零れる。
そのまま、私にキスをする。
「んっ、」
「もうお前なしじゃ、だめだわ」
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りんご(プロフ) - ちょこれえとさん» すみません、返信遅くなりました。好きになったと言って頂けて嬉しいです。これからも自分のペースで頑張っていきます! (2020年3月6日 13時) (レス) id: 72494e54b9 (このIDを非表示/違反報告)
ちょこれえと(プロフ) - めっちゃ面白いです!キヨのこともっと好きになれました! これからも頑張ってください!! (2020年3月3日 13時) (レス) id: cdd2774812 (このIDを非表示/違反報告)
りんご(プロフ) - みんさん» ありがとうございます!1番好きと言っていただけて嬉しいです。自分のペースで頑張らせていただきますので、これからもよろしくおねがいします! (2020年1月31日 23時) (レス) id: 72494e54b9 (このIDを非表示/違反報告)
みん(プロフ) - はじめまして!いつも拝見させていただいています!たくさんあるキヨのお話の中で一番好きです(^^)vりんご様のペースで頑張ってください。陰ながら応援してます! (2020年1月31日 18時) (レス) id: c336b5de5e (このIDを非表示/違反報告)
りんご(プロフ) - なおさん» 初めてのコメントをいただけて嬉しいです!年齢制限の方は別サイトになると思いますが、前向きに考えますね。ありがとうございます。 (2019年12月13日 19時) (レス) id: 72494e54b9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:りんご | 作成日時:2019年12月10日 14時