41話 ページ42
今時キスひとつで別れるとかいないと思うけど、と背中を洗いながらキヨさんは笑った。私は椅子に座ってされるがままである。
一通り背中を洗い終わったキヨさんは、私にスポンジを渡す。
「前は自分で洗えよ。俺これから頭洗うから」
「は、い」
キヨさんのことだから前も洗うのかと思っていたから、拍子抜けした。それが表情に現れていたのか、キヨさんは顔を逸らして、気まずそうにシャワーのお湯を頭にかけた。
「……前も洗うのかと思ってたのかよ」
「はい、てっきり」
キヨさんはため息をつく。
そして私に背中を向けて、シャンプーを手に取って洗い始める。
15秒くらい黙ったあと、小さな声でキヨさんは言った。
「今、お前の裸をまともに見たら耐えられる気がしないから、我慢してんだよ」
ぼんっと効果音がついていただろう。
そのくらい、私の顔は真っ赤になった。
✱
ずっとキヨさんが近くにいてくれたお陰で、暗い気持ちにならないまま風呂を入ることが出来た。
2人でバスタオルをまいて風呂場を出る。
キヨさんの家に置きっぱにしている下着と、キヨさんのパーカーを渡され、着替えろと促された。
そして、パーカーを見て、今まで見た事ないデザインなことに気づいた。
「あれ?このパーカー初めて見ました」
「あと2週間で始まるイベントの完成品だよ」
そういえばそうだった。キヨさんとかレトルトさんとかで、大きなイベントをやるらしい。
内容も何もかも知らないし、そもそも私は休日に大事な講義が入ってしまったためいけなくなったのだ。
頂いた関係席?のチケットを返したのは記憶に新しい。
「あ、前のより着心地いいですね」
「だろ〜?今回めっちゃこだわったの」
すぽんと頭からパーカーを被って、洗面所でドライヤーで髪の毛を乾かし始めた。
キヨさんは髪の毛を軽く拭き取った後にすぐ横にあるキッチンに立った。
「今日鍋焼きうどんでいい?ってもセットの煮込むだけのやつ」
「いいんですか?」
キヨさんは作り方の紙を見ながらおー、と適当な返事をした。
「2人分作って食べようぜ。腹減った」
こうして、煮込み終わった後くらいに私も髪の毛と肌の手入れが終わり、2人で鍋焼きうどんを食べる。
泣いたせいか、恐怖の元凶から離れたせいか。
心がスッキリしている。
お陰で、うどんがとても美味しかった。
「キヨさん」
「話は後で聞いてやるから、とりあえず食べろ」
そして、何より彼の優しさが胸にしみた。
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りんご(プロフ) - ちょこれえとさん» すみません、返信遅くなりました。好きになったと言って頂けて嬉しいです。これからも自分のペースで頑張っていきます! (2020年3月6日 13時) (レス) id: 72494e54b9 (このIDを非表示/違反報告)
ちょこれえと(プロフ) - めっちゃ面白いです!キヨのこともっと好きになれました! これからも頑張ってください!! (2020年3月3日 13時) (レス) id: cdd2774812 (このIDを非表示/違反報告)
りんご(プロフ) - みんさん» ありがとうございます!1番好きと言っていただけて嬉しいです。自分のペースで頑張らせていただきますので、これからもよろしくおねがいします! (2020年1月31日 23時) (レス) id: 72494e54b9 (このIDを非表示/違反報告)
みん(プロフ) - はじめまして!いつも拝見させていただいています!たくさんあるキヨのお話の中で一番好きです(^^)vりんご様のペースで頑張ってください。陰ながら応援してます! (2020年1月31日 18時) (レス) id: c336b5de5e (このIDを非表示/違反報告)
りんご(プロフ) - なおさん» 初めてのコメントをいただけて嬉しいです!年齢制限の方は別サイトになると思いますが、前向きに考えますね。ありがとうございます。 (2019年12月13日 19時) (レス) id: 72494e54b9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:りんご | 作成日時:2019年12月10日 14時