40話 ページ41
連れてこられたのはキヨさんの家だった。
私が家族に連絡を入れるのを画面を見て確認したキヨさんは、私の手を離さずにぐんぐんと進んでいく。
連れてこられたのはお風呂場だった。
そして、目を白黒させている私の服を、キヨさんは脱がし始めた。
「!?」
抵抗は出来なかった。彼はとても器用に私のパーカーと、ジーンズを脱がす。
下着もするりとぬがして、私が胸を隠すと同時に、白いタオルを私に投げた。
「洗濯しとくから、早く入れ」
「……で、でも」
「10分後に俺も入るから早くしろ」
そのまま背中を押される。キヨさんはお風呂の栓を閉めて、お湯を入れ始める。
そして私が入ったことを確認してドアを閉めた。
ぶるり、と身体を震わせる。
「……さむい」
フェイスタオルを渡されたとはいえ、お湯が満たされていない風呂場は寒い。風邪をひくのも嫌だったので、コックをひねってシャワーを出した。
数分してお湯が暖かくなる。身体に暖かいお湯を当てて、湯気が漂い始めた風呂場。
キヨさんが置くことを許してくれた私の洗顔用の石鹸で、私は顔を洗い始めた。
洗顔して、顔を軽く拭き取る。しばらくして、洗濯機の音が外からし始めた。そして、風呂場のドアが開く。
そこには、下半身にタオルを巻いたキヨさん。
「……顔と体洗うからな」
「…………」
抵抗を許さない声色だったので、小さく頷く。
キヨさんは無言のまま、シャンプーを数回出して、私の頭を洗い始める。
「………ふ、っ、う……っ……!」
その手つきが優しくて、さっき枯れるほど流した涙が止まらない。
辛かった。
苦しかった。
好きじゃない人に、キスされるのが、こんなに、屈辱とは思わなかった。
「……ぜーんぶ、消毒するからな」
「……うああああっ……!」
ぽんぽん、と頭を撫でられて、優しく頭を洗う。声すら抑えられなくて、風呂場に反響して、うるさいだろうに。
何も、言わなかったのだ。
「わたし、いやだった」
「うん」
「キヨさん以外にキスされた」
「……ああ」
「気持ち悪くて、この口、取りたい」
「口取られたらお前と話せなくなるじゃん」
「……ばか、……」
「嘘だって」
「…………………わかれたくないよぉ………」
キヨさんが背中にいて、私は顔が見えないことをいいことに、本音がポロリと零れる。
瞬間、キヨさんに後ろから抱きしめられる。
「当たり前だろ。俺だって別れたくねえわ」
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りんご(プロフ) - ちょこれえとさん» すみません、返信遅くなりました。好きになったと言って頂けて嬉しいです。これからも自分のペースで頑張っていきます! (2020年3月6日 13時) (レス) id: 72494e54b9 (このIDを非表示/違反報告)
ちょこれえと(プロフ) - めっちゃ面白いです!キヨのこともっと好きになれました! これからも頑張ってください!! (2020年3月3日 13時) (レス) id: cdd2774812 (このIDを非表示/違反報告)
りんご(プロフ) - みんさん» ありがとうございます!1番好きと言っていただけて嬉しいです。自分のペースで頑張らせていただきますので、これからもよろしくおねがいします! (2020年1月31日 23時) (レス) id: 72494e54b9 (このIDを非表示/違反報告)
みん(プロフ) - はじめまして!いつも拝見させていただいています!たくさんあるキヨのお話の中で一番好きです(^^)vりんご様のペースで頑張ってください。陰ながら応援してます! (2020年1月31日 18時) (レス) id: c336b5de5e (このIDを非表示/違反報告)
りんご(プロフ) - なおさん» 初めてのコメントをいただけて嬉しいです!年齢制限の方は別サイトになると思いますが、前向きに考えますね。ありがとうございます。 (2019年12月13日 19時) (レス) id: 72494e54b9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:りんご | 作成日時:2019年12月10日 14時