39話 ページ40
みられていた。
きらわれる。
1歩下がろうとした。1歩下がって、そのまま走れば、家に帰れば。
「逃げるなよ、」
逃げれられる、と思っていた。
キヨさんの声が、私の行動を遮る。
彼は、大股で私の目の前まで歩いてくる。
そして、今までにないくらい、力強く抱きしめてきた。
「………や、」
嫌だ。こんな、汚れた私に、優しくしないで欲しい。
「……ごめん、」
ごめん、はこちらのセリフなのに、キヨさんは謝ってきた。
俯いている私の頬を掴んで、ゆっくりと上げる。
ぼろぼろと、涙が止まらない。
化粧も落ちて、汚い顔なのに。
「……ど、して、あやまるんですか」
どうして、そんなに、苦しい顔をしているの。
「………お前のバイト先の近くで、たまたま用があって」
ぽつぽつとキヨさんは話し始める。
「帰りにちょうどお前がいればラッキーくらいで、五分くらい待ってようと思ったら、近くに変な男がうろうろしてて」
「嫌な予感がしたから、隠れて見てたら………」
そこで言葉を切った。
今まで見た事ない顔だった。
キヨさんも、私がキスされるとは思っていなかったのだろう。
「……ごめん」
もう一度謝られる。
私は耐えられなかった。
「……わかれる、んですよね」
「は?」
「こんな、他の男にキスされるような甘い私、キヨさんの近くにいれるわけないじゃないですか」
笑ってしまう。気をつけろと散々色んな人に言われていたのに、いとも容易く許してしまう自分が、気持ち悪かった。
もっと、抵抗出来ればよかったのに。
「それに、ひかるくんの言うことは間違ってないんです」
迷惑をかける人とは、散々言われてきた。
好きになった人に振られたのだって、自分のせいだ。
「……海、見に行くって話だって、私が、台無しにしたじゃないですか」
「結局、私が、人と付き合うって、無理なんですよ」
気づいていない、振りをしていたのかもしれない。
幸せすぎて、忘れていたのだ。
なにが、好きな人と幸せになりたいだ。
ひかるくんに言ったくせに、今はその好きな人を見られない。
なんて臆病な人間だろうか。
そんな勇気のない人間、彼の隣に立っていても、迷惑だ。
「……ふざけるなよ」
キヨさんは、私から体を離した。
そして、私の手を引いて、歩き出した。
「お前、今のうちに、家に連絡入れとけ」
有無を言わさない態度だったので、言われるがままに連絡いれて、手を引っ張られるしか無かった。
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りんご(プロフ) - ちょこれえとさん» すみません、返信遅くなりました。好きになったと言って頂けて嬉しいです。これからも自分のペースで頑張っていきます! (2020年3月6日 13時) (レス) id: 72494e54b9 (このIDを非表示/違反報告)
ちょこれえと(プロフ) - めっちゃ面白いです!キヨのこともっと好きになれました! これからも頑張ってください!! (2020年3月3日 13時) (レス) id: cdd2774812 (このIDを非表示/違反報告)
りんご(プロフ) - みんさん» ありがとうございます!1番好きと言っていただけて嬉しいです。自分のペースで頑張らせていただきますので、これからもよろしくおねがいします! (2020年1月31日 23時) (レス) id: 72494e54b9 (このIDを非表示/違反報告)
みん(プロフ) - はじめまして!いつも拝見させていただいています!たくさんあるキヨのお話の中で一番好きです(^^)vりんご様のペースで頑張ってください。陰ながら応援してます! (2020年1月31日 18時) (レス) id: c336b5de5e (このIDを非表示/違反報告)
りんご(プロフ) - なおさん» 初めてのコメントをいただけて嬉しいです!年齢制限の方は別サイトになると思いますが、前向きに考えますね。ありがとうございます。 (2019年12月13日 19時) (レス) id: 72494e54b9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:りんご | 作成日時:2019年12月10日 14時