【実.況.者】君と見る世界【ky】

31話 ページ32

甘い。…………甘い、のか。
確かに、撮ってる時のキヨさんはテンションは動画の時のものであるが、私に対しては優しい気がする。


｢………まじで？｣


｢えっ、自覚ないの？！｣


フジさんが驚く。グラスを宙にさまよわせたまま、キヨさんに顔を近づけた。
アルコールの匂いにキヨさんが嫌な顔をする。


｢酒くさ！｣


｢キヨ。お前ほんとに自覚ないの？｣


｢イチャイチャしてそうなところは結構カットして編集してるから、普通の実況だと思ってた｣


｢ふふふっ、キヨってば、無自覚だったの？｣


可愛い見た目に対して飲むものはオヤジ臭いなぁ、とヒラさんを見て思う。ごくり、とビールを飲み干して、ニコニコと笑顔を浮かべた。


｢確かにイチャついてるところは綺麗にカットされてるなぁって思うけど、普段からキヨはAちゃんに優しいから、それが全部出ちゃってるんだよ｣


ヒラさんの言葉に、言われて自覚したところもあるのだろう。
少し顔が赤くなってたのは気の所為ではなさそうだ。


｢キヨさん｣


｢……なんだよ｣


｢顔赤いですよ｣


デコピンをされた。


✱
おんぷ『動画を撮り終わり最俺の皆さんと焼肉食べに来てます。たくさんコメントとか評価とか本当にありがとうございます。写真はお肉です。お肉は正義。ただ野菜も食べなきゃダメですね』

→『めっちゃ面白かったよー！お肉美味しそう』

→『キヨに喧嘩売ってんの草』

→『野菜嫌いって誰ですかね？写真に無駄にでかいピースしてる人ですか？』

→『最俺みんなピースしてる……こういう写真珍しいなぁ。手だけで誰かわかるようにしてるおんぷちゃんの配慮も気が利くなぁ』


｢……俺に喧嘩売ってんのか｣


ソファーで呟いてると、隣でスマホを覗かれた。
焼肉を解散して、キヨさんの家にきた。今日は泊まることになっている。
こてん、と私の肩に頭を乗せるキヨさんは不貞腐れた顔だ。


｢野菜食べないキヨさんが悪いですよ｣


｢……別に。食えないことは無いし｣


｢何年か前に上げてた野菜動画はなんだったんですか｣


焼肉でもほとんど野菜を残して私が食べていたのに。
たまにキヨさんは素直にならない。頭を私の肩に預けたまま、自分のスマホをいじり出した。
瞬間、通知が来る。彼が引用したのだとすぐにわかった。


キヨ『野菜嫌いって誰のことですかね？？そういえば、おんぷはお肉食べまくってましたね。食いしん坊かよ』


→おんぷ『私に野菜ほとんど食べさせたのは誰ですかね？』

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