7話 ページ7
日曜日。天気が良くて、お出かけ日和。
しかし、私の心は大変緊張に包まれていた。
「ねえお母さん。この服おかしくない?」
「ええ、とっても似合ってるわよ。A」
たった一日、お礼を渡して、ご飯を食べてくるだけなのに。
もうこれ以上、彼に迷惑をかけるつもりはないのに。
昨日の夜からお母さんと一緒に柄にもなく服を選びまくって、今日も迷うっていう。
「ん〜〜もう!しっかりしなさいよ!」
ぱんっと軽く背中を叩かれた。お母さんはそれはもう嬉しそうな顔をしている。
「服も化粧もバッチリ!キヨさんも喜んでくれるわよ」
確かに化粧もかなり気合を入れた。それでも、何故か不安は拭いきれないのだ。
ドキドキと心臓が音を立てていて、自分でも抑えることが出来ない。
彼には初対面で酷い醜態を晒している。これ以上悪い印象を持ってもらう訳にはいかないからだ、と言い聞かせてみる。
「……うう、大丈夫かなぁ」
「Aにも春が来たかもしれないわねぇ」
鏡に夢中になっている私は、お母さんのそんな嬉しそうな言葉は聞こえなかった。
✱
ぴんぽーん、と家のチャイムが鳴った。
待ち合わせする予定だったのだが、彼は迎えに来てくれるとの事だった。
「じゃあ、行ってくるね」
「ええ、気をつけてね。暗くなる前には帰ってくるのよ」
「なんかあったら迎えに行くからな」
相変わらずな2人に手を振って、ドアを開けた。
「……おはよう、ございます」
そこには、この間会った時とは違う、キヨさん。スウェットから、普通の私服を身にまとっていた。何故か、マスクと帽子を身につけているのが、気になったけど。
「お、おはよう、ございます」
彼は、出てきた私に少しだけ目を見開いて、そのまま挨拶をした。
「お、おはようございます」
私も同じように返す。
少しの沈黙。
「……じゃあ、いくか」
「あ、はい!」
破ったのは彼で、スタスタと歩いて、私の家の前に止まってあった車に乗ろうとする。
「助手席……と思ったんだけど、今散らかってて、後ろでもいいか?」
「はい!寧ろ、車だしてもらえるなんて思ってなくて……あとで交通費払いますね」
ガチャ、とドアを開けて助手席の後ろに座る。
キヨさんも運転席に使って、エンジンをすぐにかけた。
「俺が行きたいところが車じゃないといけないから、交通費はいらねえ」
「で、でも」
「その代わり今日は一日付き合えよ」
ぶうん、と車が走り出した。
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りんご(プロフ) - ちぃさん» コメントありがとうございます。かっこいいと言っていただけて嬉しいです。ここ最近リアルなどが忙しいので、更新に波があると思いますが、長い目で見ていただけると幸いです! (2019年11月21日 18時) (レス) id: 72494e54b9 (このIDを非表示/違反報告)
ちぃ(プロフ) - 7話まで一気に読ませていただきました!キヨくんかっこいいです。続きが楽しみです。無理しない程度に頑張ってくださいね! (2019年11月21日 9時) (レス) id: bc58f84b7f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:りんご | 作成日時:2019年11月10日 20時