32話 ページ32
病院に行ったので、1と2コマにあった講義は休んでしまった。今は病院のあとにお父さんが運転している車に乗っている。
友達からたくさん通知が来ているので、車の中で返していく。プリントとかも取っておいてくれていたみたいだ。非常に有難い。
「A、ほんとに大学いって大丈夫?眼鏡できるまでは休んでもいいのよ?」
「あの大学なら私も関わっている。休みくらい何とかしてやる」
「ううん。わたし、早く外に出て、色がついた街を見てみたいの」
2人して過保護を発揮していたが、私はそれはきっぱり断った。送ってくれた2人に感謝して、4コマの講義に急ぐ。
3コマは空きだったとは言え、少しのんびりしすぎたな、と急ぎ足で大学に入る。
そして、足が止まる。
「………う、わぁ………」
秋が終わりを迎えていて、世間では雪が降っているところもある。私の生まれたところはもうかなり雪が降っていて、根雪になるだろう季節だ。
しかし、こちらはまだ紅葉が残っている。
葉の色が灰色ではなく、違う色に染まっている。
「これが、赤色」
すとん、と頭の中に落ちてくる。
色って、こんな感じなんだなぁ。
「すごい、」
感動してしまったが、今はとにかく講義に急がなければ、と足を動かした。
足元に落ちた葉っぱにも色がついている。
どうしようもなく、それが嬉しかった。
✱
「Aさん!やぁっときた!」
5分程遅刻してしまった。しかし、先生はそう言っただけで怒ることは無かった。
すみません、と謝る。すると、また別の方向から声が。
「Aきたぁーー!!もう!!!連絡もなしに欠席するからほんとに事故ったのかと………!!」
「このまま1日休んだら家に行く所だったよ………」
「全く!返信くらいしなさいよ!」
友達が講義室の席の最前列に座って待っていた。
不安な顔をしている彼女らの顔も、綺麗に色づいていた。
顔ってこんな色してるんだ、と思いながら彼女達の座っている席の隣に座った。
「ごめん、ちょっと病院行ってて」
「そこの3人!特にえみさん、うるさいわよ。Aさん。練習してきたならさっさと席に座ってちょうだい。アンサンブルするわよぉ」
先生に言われて、最前列の3人は黙った。私はバッグからえみちゃんから渡されたプリントを持って、ピアノにすわった。
先生は満足そうに笑って、ヴァイオリンを取り出す。
「さぁて、今日はアンサンブルについて色々やっていくわ」
そう言った先生の唇も、赤く色づいていた。
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りんご(プロフ) - ちぃさん» コメントありがとうございます。かっこいいと言っていただけて嬉しいです。ここ最近リアルなどが忙しいので、更新に波があると思いますが、長い目で見ていただけると幸いです! (2019年11月21日 18時) (レス) id: 72494e54b9 (このIDを非表示/違反報告)
ちぃ(プロフ) - 7話まで一気に読ませていただきました!キヨくんかっこいいです。続きが楽しみです。無理しない程度に頑張ってくださいね! (2019年11月21日 9時) (レス) id: bc58f84b7f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:りんご | 作成日時:2019年11月10日 20時