1話 ページ1
私の世界は、2色しかない。
白と黒しか、認識できないのだ。
｢全色盲なら、視力は0.1程になるのですが、視力検査をしたところ、片目1.0以上あるんですよね｣
｢ストレスによって脳の方が色を認識していないのではないでしょうか｣
医者の言葉は、だいたいそんな感じ。
どこの病院に行っても、この色の感じない瞳が治ることはなかった。
｢ごめんね、A｣
お母さんが、私のことを思って沢山涙した。
そんなお母さんの顔を見るのが、辛くて、悲しかった。
それでも、
｢ううん、もう慣れたから｣
────20歳を過ぎ、大人になってからはもう自分の環境に何も感じなくなった。
｢そろそろ時間だし、私いくね｣
｢夜だけど、飲み会なんて大丈夫？帰りは私迎えに行くわよ｣
｢大丈夫、電車も乗らないし、近所だし。友達と一緒に行くから｣
多忙のお母さんに迷惑かけられない。お父さんも心配そうにこちらを見ていたが、たまには2人きりでゆっくり晩酌をしてほしいと押し切った。
｢……帰る時は連絡しろよ｣
寡黙な父親から、珍しくそんなことを言われて、擽ったい気持ちになる。
それに返事をして、家を出た。
｢A、お待たせー！｣
家まで迎えに来てくれた友達が数人、私の近くまでやってくる。そして、スマホのライトをこちらに当てた。
｢うわ、眩しいよ！｣
｢えへ、じゃあ行こ！｣
手を繋がれる。もう空は真っ暗で、いきなり手を繋ぐ前にちゃんといることを知らせてくれたのだろう、優しい友達に感謝する。
｢A、今日も可愛い格好してるねぇ｣
｢え、そんなことないよ｣
｢だってこんなに髪の毛巻いちゃって〜〜｣
手を繋いでないもう1人の友達が、私の髪の毛に触る。お母さんが綺麗に巻いてくれたそれは、友達の指をするりと抜けていく。
｢はぁ〜〜。さらさらしてる｣
｢……酔ってる？｣
｢えへ、実は家で缶開けてきてちゃった｣
なんて話して、居酒屋につく。明かりが強くなって、私も色々見えてきた。
不便な視界だけど、案外何とかなってるのだ。
✱
｢それではぁ、今日はぁ、かいさ〜〜んッ！｣
｢うわ、酔すぎ！｣
｢すまん、こいつ最初から調子乗ってたけど止められなかった｣
たっぷり3時間くらい、10人くらいの飲み会だったが、すごく盛り上がった。私はお酒が苦手で、あまり飲まなかったけど。
｢うぷ、やばい｣
｢うわっこいつ｣
｢Aごめん！1人で帰れる？｣
｢うん、むしろ任せて大丈夫？｣
｢大丈夫！むしろごめんよ｣
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りんご(プロフ) - ちぃさん» コメントありがとうございます。かっこいいと言っていただけて嬉しいです。ここ最近リアルなどが忙しいので、更新に波があると思いますが、長い目で見ていただけると幸いです！ (2019年11月21日 18時) (
レス) id: 72494e54b9 (このIDを非表示/違反報告)
ちぃ(プロフ) - 7話まで一気に読ませていただきました！キヨくんかっこいいです。続きが楽しみです。無理しない程度に頑張ってくださいね！ (2019年11月21日 9時) (レス) id: bc58f84b7f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：りんご | 作成日時：2019年11月10日 20時
