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向こうの交差点で、人が、泣いている。俺らのよく知る、最古参メンバーの一人。
「オスマン＿＿＿＿」
何故、彼は泣いているのだろうか。何故、彼には点々と赤い花弁が散っているのだろうか。
＿＿＿＿何故、その横に、俺らのよく知るメンバーが、倒れて居るのだろうか。
「ッ＿＿＿ひとらん！！！」
「え、コネシマさん、…！？？」
「待て、シッマ！！エミさんッ…オスマン！！？」
思わず駆け出すが、周りの景色が、コマ割りされているように、ゆっくり、ゆっくり。一枚ずつ進んでいく、音なんか一切しない。そんな世界に放り込まれた気がした。やっと音が認識できた時点で、集る人々は、やれ救急車だの、やれ警察だの、人垣が厚くなり、騒々しさが増す。その中、俺達は立ち尽くすしかなかった。
気が付けば救急車が到着しており、ひとらんは担架に乗せられ、付添人としてオスマンが乗る。
「＿＿＿＿＿＿＿＿は、は…」
自分の口から零れ出したそれは、情けない程に軽く、掠れていた。何の感情を乗せずに、瞬く間にサイレンの音に掻き消される。汗が止まらない。今は、冬もそろそろ近づいて来ている、秋真っ只中だというのに。
嫌だ、何故、如何して、誰が＿＿？そんな事考えたって、如何しようもないのに。現実を受け止めたくなくて、友人の命が絶たれるなど考えたくも無くて。現状把握さえもままならない、こんな我楽多を誰か、誰でもいいから、
こんな俺を、見放さないで。
なんて、悲劇のヒーローか、俺は。全く、此奴は…仲間が傷ついているというのに。そんな中でさえ、己の保身に走るのか。
他人を＿＿＿友人を失う事より先に、自分の心が壊れてしまうことを恐れている。…否、そんな思考をしている時点で、人を思いやる心なんぞ、もう自分の中には残っていなかったのかも知れない。
嫌になるなぁ、こんな自分。
段々と遠のいていくサイレンの音。やがて薄れていく人々の騒めき。
自分の足は、まるで鉛のように動かない。鉄の枷でもはめられて、鉄球でも引きずっているのか？と錯覚する位、動こうとしない。
でも、ただ呆然と、ずっとそこに突っ立っていたのは俺だけなようで。
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作者名：ringo517 | 作成日時：2020年10月11日 20時
