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静かな空間に、シャワーから流れ出す水音だけが響く。涙はおさまった。わざわざ湯も貯めてくれたショッピ君には、今度何かお礼でもしなくては、と思う。取り敢えず全体は洗い終わったので、湯船へと浸かる。
「……あったかい、なぁ…」
まるで、懐かしむように。噛み締めるように。体が温まるこの時間は、心の傷など、無視出来るから。そう、思い込めるから。
そろそろ出ようと、扉を開ける。すると、すぐそこに置いてあった籠に、バスタオルと…
「…これ、」
赤いTシャツ、黒いスウェットパンツ。普段着ているTシャツ短パンとは違うが、色を寄せてくれた。どこまで気が利く後輩なのだろう。簡単に髪と体を拭き、着衣する。大きさもほぼピッタリ、Tシャツの裾が少しだけ長いくらいだ。全くあの後輩は、と息を吐き、リビングにいるであろう彼の元へ向かう。
「ショッピ君、色々と有難うな。」
「いいっすよ。今日、もう暗いっすけど、どうします？泊まるんやったら布団敷きますし。」
「あー…御免、泊まってええ？」
「いいっすよ。」
深くは詮索してこない。
それが今は、凄く有難く感じた。
「ココア、どうぞ。…突然聞くのもあれっすけど。…何が、あったんすか？」
「…実は、な。」
そこからは、少し話すのに躊躇いながらも、彼なら否定はしないだろうと思い、洗いざらい順を追って説明していく。シャオロンを引き戻せた事、トントンを誘いに行った事。つい感情的になり、喧嘩紛いなこととなってしまった事、そうして今、こうして彼と一緒にいるという事。最後まで彼は、相槌を打ちながら、真面目に聞いてくれた。
「で、まず、コネシマさんはどうしたいんすか？」
真っ直ぐ目を見て告げられる。
俺、は。
「皆とまた、動画を撮りたい。このままトントンと険悪な中のままなんじゃ無くて、確かな友情で繋がっていたい。」
「…はぁ。」
溜め息をつかれた。その顔は、先程の慈しむような表情とは打って変わって、無邪気な子供が
『新しい玩具、見ぃつけた』
とでもいうように、口角が上がりきっている。
「いつもみたいに、相手の事考える前に発言したらええやないっすか。で、それこそ喧嘩に持ち込んでみたらええやないんですか？ほら、コネシマさんって相手が呆れるくらいに心無い発言かませるんですもん。」
「………えっ」
あれっ…？さっきの他人思いの後輩は、一瞬で崩れ去った。煽られている気しかしない。
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総統閣下、10周年おめでとう御座います。
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作者名：ringo517 | 作成日時：2020年10月11日 20時
