紫 ページ16
『先生……。』
「遅かったな。」
いつもはぼさぼさの髪も、今日は後ろで丁寧に束ね、髭をそった顔。そして見慣れないスーツ姿。ダメだ、会話に集中出来なさそう…。
「卒業おめでとう、色想。ほら、返すぞ。」
『あ、シャーペン。…ふふっ。ありがとう。』
「どうした…。」
『いや、なんとなくね。』
なんだかシャーペンを受け取ることが今になって少し嬉しく感じた。不思議だね。それに卒業おめでとうって、模範的すぎて笑っちゃうよ。
『じゃ、答え合わせをしよっか。』
「あぁ。」
『｢ヒーローの定義は……
＿＿＿＿＿ない。｣』
綺麗にハモった私たちの声は軽く響いた。それに私たちは声に出して笑った。やっぱりそうなんだと分かっていたからこそ笑えたんだと思う。
ヒーローの定義はない、なぜなら元からないんだもん。そんなの探したってあるわけない。
じゃあヒーローといえるのは誰か。免許があればヒーロー？戦えばヒーロー？救えばヒーロー？いや違う。そんなの全部見えるじゃないか。
なんのためにプロという名のがついているのか。あくまで憶測だけど、それって誰もがヒーローになれるってことを指しているんじゃないのかな。
『私は、誰かの正義になれたとき、人はヒーローになれるんだと思う。誰でもいい。ヒーローが“プロヒーロー”みたいなことを指しているんじゃない。たとえ敵という名のヒーローであっても、後輩の過ちを一緒に謝ることでも、弱いものいじめをするやつに立ち向かうことでも、道端で泣いてる子の話を聞いてあげることでも、勇気を出して1歩踏み出しせばヒーローなんだと、私は思うね。でもこれは私の定義。ヒーローの定義はないのだから。』
「…よく考えたな、100点だ。」
先生はそう私の頭を撫でた。思わず笑って「うん」と応えた。今日は白いひつじ雲が浮かぶ晴れ。それと共に私もちゃんと晴らす。
『先生、好きだよ。これまでもこれからも。』
「そりゃ嬉しいね。」
ようやく私の心は、先生が言ってくれたように晴れた。伝えれたんだ、届けれたんだ。先生がどうその言葉をどう解釈するなんて知らない。いや、知らなくていい。
『先生、あとね＿＿＿。』
「Aー！遅いよ！」
『ごめーん！』
高校最後、春の屋上からみた空は青かった。
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紅葉桜(プロフ) - 過眠さん» ありがとうございます！しっかり伝わってて良かったです笑素敵な作品だなんて嬉しいです笑 (2020年5月10日 8時) (
レス) id: e8ee42e7f8 (このIDを非表示/違反報告)
過眠(プロフ) - 一気に読んじゃいました！！ヒーローの定義、夢主ちゃんの言葉ストンと自分の心に入ってきました。とても素敵な作品です！！！！ (2020年5月10日 4時) (レス) id: 0e313d130c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：紅葉桜 | 作成日時：2020年5月2日 14時
