全ての始まり 漆 ページ9
「いくら本人のこととはいえ、子供に聞かせる話じゃなかったよね。」
備え付けのティーカップを棚から出しながら、彼女は重い空気を割くように口を開いた。
「…戦争なんて、私が…」
「上は焦ってるけど、まだ大丈夫。子供にそんなことさせるなんて、私が許さないから。」
思ってもみなかった言葉に、目を見開く。目が合った彼女は清廉なほほ笑みを浮かべて頷いた。
「ここに呼んだのはね、あなたのお父さんとお母さん。…もっとわかりやすく言うと、関係者以外には話せないことを話すためよ。」
「機密事項…ですか？」
そういって、簡単に言うと。と前置きをして彼女は話し始めた。
わからないところは聞き返して、自分なりに飲み込みながら頭に入れていく。
「つまり、今急に戦力を増やしすぎるのは良くないから、少なくとも高校は行けるってことでいいんでしょうか」
現状、敵の後手に回っている。唯一分かっているのは敵の目的だけ。
「そういう事ね。一気に投入して全滅されたらこちらの詰みだから。向こうも頭が回るし、国が見つけた適正者の中にはまだ物心ついてないような子供もいるの。だから、そういう子供たちの情報は完璧に秘匿して今後に残すべきだわ」
適正を持っているからと言って確実に降ろせるとは限らないしね。
そう一区切りつけて、紅茶を口に運ぶ。
「！じゃあ私も適性があっても適合しないことが！？」
弾む声を隠しきれずに問いかけると、曖昧な笑みを返される。膨らんだ風船に針を刺されたような心地がした。
「希望を持たせるようなことを言ってごめんなさい。私が謝ることで何かが変わるわけじゃないけど、この計画…刀剣乱舞計画と呼ばれているこの計画は適合率が9割を超えると、強制的に名簿に名前が乗るわ。そして…貴女の適合率は9割5分。」
「…そんな！」
目の前が真っ暗になる。刃物で体を斬られ、赤が視界に広がる不吉な映像が頭をよぎった。
「貴女が普通の生活を捨てなくてもいいように私も全力を尽くす。だから貴女も…なんて、詭弁はやめておきましょう。私たち政府が貴女から自由を奪うのは事実だものね。ああ、まだ名前も名乗ってなかったかな」
この人が優しい人なことはもう分かった。
子供だからと誤魔化さないで、きちんと真摯に向き合ってくれた。
ぐちゃぐちゃな心を押しつぶして、せめて毅然と顔を上げる。
「私の名前は山姥切長義。刀剣乱舞計画最初期顕現メンバーで、刀帳番号158。…貴女と同じよ。Aさん。」
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トイプードル - わー！コメント嬉しいですありがとうございます！これからも更新続けていきますので暖かく見守ってください！ (2019年4月2日 7時) (
レス) id: 3116b53546 (このIDを非表示/違反報告)
十六夜 - 続きが楽しみです！これは、みかつるの予感がありそうで嬉しいです！続きが楽しみです！更新、頑張ってください！ (2019年4月1日 13時) (レス) id: 625c8539c6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：トイプードル | 作成日時：2019年3月25日 12時
