全ての始まり 伍 ページ7
その日の夜、仕事から帰ってきたお父さんに向かって珍しく上機嫌に話すお母さんと、そんな姿を見て驚きながらも話に応じるお父さんを見た。
最初はぎこちなかった空気も話が進むにすれほぐれて温度が上がっていき、とうとう二人とも顔を上気させながら異様な空気を纏っていた。
「A！凄いじゃないか！お母さんから聞いたぞ！国からの推薦だなんて！」
「そうでしょう！なのにちっともこの子ったら嬉しそうにしないのよ！」
「折角だ！早い方がいいに決まってる！明日話を聞きに行こう。仕事も何とか話をつけておく！」
私の意思はお構い無し。
そんなことは知っていたけど、ため息を飲み込むのが大変だった。
「それなら、明日は早いでしょうから失礼します。お休みなさい。お父様、お母様」
返事も待たずに自分の部屋へ飛び込んだ。どうしても悔しくて、ぐっと瞑った目から涙が枕の上に落ちる。
私は両親の道具でしかない。出来るだけ上の(これも親の主観だ)学校に入って、一流企業に入って、玉の輿を狙えれば万々歳。知ってた…知ってた。
折角友達ができたのに、身の程知らずだと呆れてさえいた学校が楽しくなったのに。
明日でそんな生活が終わるかもしれない。
明日が来なければいいのに───
なんて考えても「明日」は誰にでも平等にやってくる。
昇る朝日が憎らしいのは初めてだ。
「おはようございます。」
「あら、早いわね！ふふ、やっぱりあなたも楽しみなんじゃない！」
「先方にも今日の午前に行くと伝えておいたぞ！急な事なのに即答だった！お前の未来が期待されてる証拠だ！」
二人の機嫌が良すぎていっそ気味が悪く、どうにも居心地が悪い。責めてもの抵抗としてゆっくり朝ごはんを食べ進め、ゆっくり髪をとかして顔を洗う。
「準備出来たか？」
「ええ。車を出して頂戴！」
無言で後ろの席に渋々乗り込む。車がいつもよりピカピカしていて、呆れたことにお父さんは昨日の夜あんなに遅い時間から戦車に出かけたらしかった。
「ああ！私たちの子供にそんな才能があるなんて！」
「二人の子供なんだから当然さ！」
仲良く笑い合う両親。小さい頃あんなに願っていた光景なはずなのに、今の私にとってはテレビの中の出来事みたいに遠く感じる。
窓の外をしばらく見つめていると、霞ヶ関のビル街が見えてきた。みんなパリッとスーツを着こなしていて、ここに居るのが恥ずかしかった。
「着いたわね。さあ、入りましょうか。」
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トイプードル - わー！コメント嬉しいですありがとうございます！これからも更新続けていきますので暖かく見守ってください！ (2019年4月2日 7時) (
レス) id: 3116b53546 (このIDを非表示/違反報告)
十六夜 - 続きが楽しみです！これは、みかつるの予感がありそうで嬉しいです！続きが楽しみです！更新、頑張ってください！ (2019年4月1日 13時) (レス) id: 625c8539c6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：トイプードル | 作成日時：2019年3月25日 12時
