刃生と狼狽 肆 ページ48
「どうした？」
黙った私に優しく話しかける。
それを黙殺したまま帯まで締め終わって、用意も終わり。
「…連絡先、教えてください」
襖を開けて三日月の前に仁王立ち。
三日月には私の影がかかっていたけど、その瞳の中の月は少しも色褪せないままこちらを見つめている。
「…？ああ」
ずいっと端末を押し付ける。
身につけていることが推奨されている特別製のものだから、きっと彼も持っているだろうと思ったのだ。
これが、今の私の精一杯。
縁がきれなかったら上々だ！
長期戦上等。少しでもこの人が私を選んでくれる確率が上がるように頑張ろう。
「これで、お友達です！この間までのことは忘れていただけると嬉しいのですが、高望みはやめておきますね」
ふんっ
息をついて新たな連絡先の増えたそれを目の前で振る。
戸惑っていた三日月もそれを見てとうとう破顔した。吹き出しても顔がいいなこの男。
「友達、か。そうかそうか。はっはっは！」
「三日月が海外に行ってもこまめに連絡しますので！ちゃんと返信返してくださいね！」
「あいわかった。俺からも連絡を送ろう」
二人で顔を見合わせて同時に吹き出す。
この人といると楽しいな、そう心から思った。
「食事…だいぶ遅れてしまいましたかね？」
「まだ配膳も始まっていなかったから大丈夫だろう。」
これもあの二人の配慮だろうか。
くっ、こればかりは礼を言うしかない。寝起きを見られた件は帳消しにしてあげよう。
「では、行くか？」
「今日の夕食はなんでしょうね」
数日前までは考えられなかったほど穏やかな空気が流れる。
次から次へと話題が出てきて、あと十数メートルで目的他に着くのに目の前の現実を見るのが惜しくなった。
薄暗い廊下とはうってかわって明るく賑やかな大広間。
名残惜しいけど、いつも食卓を囲むメンバーのところへ行くために入口で別れた。
席に目を向けると、既に配膳を負えたらしい二人がにやにやとこちらを見つめてくる。
「…にやにやしないでください。」
「いや〜三日月さんのことすぐ追い返すかなって思ってたんだけど〜」
「私の勝ちですね。加州、デザート貰いますよ」
こいつら人で賭け事してやがる！
プリンを取られてぶすくれる加州を横目に、景品を上から失礼する。
「賭け事は本人にバレないようにやるべきです。…というわけで私がもらいますね」
光の作ったプリンは美味しいからね。
ラッキー！
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トイプードル - わー！コメント嬉しいですありがとうございます！これからも更新続けていきますので暖かく見守ってください！ (2019年4月2日 7時) (
レス) id: 3116b53546 (このIDを非表示/違反報告)
十六夜 - 続きが楽しみです！これは、みかつるの予感がありそうで嬉しいです！続きが楽しみです！更新、頑張ってください！ (2019年4月1日 13時) (レス) id: 625c8539c6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：トイプードル | 作成日時：2019年3月25日 12時
