刃生と出会い 肆 ページ32
促されて目を向けた部屋の奥。そこには上背のある1人の男性が座っていた。
「！遅くなって申し訳ありません。」
慌てて頭を下げた。
会社勤めなんてしたことないけど、上司より遅く席に着くのがNGなことくらいは知っている。
正直びくびくしていたけど、その人は優しく口を開く。
「いい、気にするな。俺も少し早くついてしまったからなあ。ほら、顔を上げてくれ。」
恐る恐る顔を上げると、目に入ったのは顔面国宝。
第一印象それか？って笑われてしまいそうだけど仕方ない。ほんとにそれしか言葉が出てこないのだ。
深い艶やかな藍色の髪と同色の瞳。ただその吸い込まれそうな瞳の中には金の下弦の月が浮かんでいる。
「鶴丸、そんな緊張しなくて大丈夫だぞ？こいつは─」
あまりの様子に見かねたのか獅子王が助け舟を出してくれる。でも、獅子王が名前を教えてくれる前に、私の中にこの人の名前が浮かんでいた。心のままに口から理性を無視した言葉が零れていく。
ああ、この方があの刀以外であるはずがない！
父(五条国永)が心からの尊敬を寄せていた師、三条宗近の傑作にして、
「天下五剣、三日月宗近様──」
魂が揺さぶられるような興奮。あまりのことに呆然と呟くことしか出来ない。
思えば、同じ流れを汲む刀に会うのは初めてだ。特に三条派は非現存刀が多く、人に降ろすのは難しいらしくて。
「えっお前ら知り合い？」
「んん…彼女とは初めて会うはずだが…いや、そうか。問題無い」
彼らの困惑すら、今の私には聞こえなかった。
感情の奔流に流されないように、必死に自分を引っ張り戻す。
「鶴丸国永」
名前を呼ばれ、知らずのうちに伏せていた顔を上げる。
「はい。三日月様」
「はじめましてだな。聞けばもう二年前からいるらしいが、挨拶が遅れてしまって済まない。仲良くしてくれ。」
柔らかく微笑むその姿すら神々しい。
「はい…」
「…出来ればもう少し気安くして欲しいのだが？」
身内のようなものだろう。
困ったように言われ、正気に戻って再び慌てる。
「もっ申し訳ないです！でも、あの…」
「？」
「体が！言うことを聞かないので…その、慣れるまでは今のままでお願いしたいです…」
どんどん小さくなって行く声。
穴があったら入りたい…
顔が赤く染っていくのが分かって、フードを深くかぶった。
そして私は、尻尾をまいて逃げたと言われてもなんの言い逃れも出来ないレベルで話を片付け、この部屋から飛び出してしまうことになる。
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トイプードル - わー！コメント嬉しいですありがとうございます！これからも更新続けていきますので暖かく見守ってください！ (2019年4月2日 7時) (
レス) id: 3116b53546 (このIDを非表示/違反報告)
十六夜 - 続きが楽しみです！これは、みかつるの予感がありそうで嬉しいです！続きが楽しみです！更新、頑張ってください！ (2019年4月1日 13時) (レス) id: 625c8539c6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：トイプードル | 作成日時：2019年3月25日 12時
