全ての始まり〜幸せの崩壊〜 捌 ページ22
！？
「優希ーーッ！」
視界に移るもの全ての動きが途端にスローになる。
私は、刀をその場に残して走った。半ば優希に飛びかかるようにして、巨大な刀の切っ先が彼女に触れるぎりぎりで抱き込む。
…勿論、私はノーガードで切り裂かれることになる訳だけど。
「っあああああああ！」
背中を思い切り切りつけられ、悲鳴をこぼす。
それでも私は優希のことだけは離すつもりはなかった。
私のせいで巻き込まれたんだもの、私が守らなきゃ。せっかく、守るための力を手に入れたんだから、一番大切な友達くらい守らないと。
血を流しすぎたのか、意識が朦朧としてきた。
それでもぴくりと身じろいだ優希に安堵のため息をつく。
…よかった、生きてる。
優希の頬に垂れた私の血を拭おうとしたけど、指は動かない。
濁ってくる視界の端で、また化け物が刀を振り上げたのが見えた。
もう、終わりか…
不思議なほど凪いだ心地のまま深く優希を抱き込み直して、ゆっくり目を閉じようとして──
次の瞬間、聞こえたのは私が叩き斬られる音ではなく、化け物の断末魔だった。
「ぐぎゃああああ」
「Aさん！方條さん！無事！？」
あんなに苦戦した化け物を一刀に伏せた山姥切さん。返り血すら被らず美しく佇む彼女の手には抜き身の刀がある。
ああ、もう大丈夫。
山姥切さんが来てくれた。
「…優希…を、よ、ろしく、お、ねが…し」
私の意識は、そこで途切れた。
山姥切長義(偽・山桐瑠璃)side
「Aさん！」
友達を抱きしめたまま気を失った真っ白な彼女。
急いで転送ゲートを開き、帰還の準備をする。
ここまで救出が遅れたのは、二人のいる座標が特定できなかったからだ。いくつもダミーデータが重なり合っていて、本命は時の政府本部があるような亜空間という念の入れよう。
現世の街をコピーしたようなものだから、Aさんもいつ紛れ込んだのか分からなかったんだろう。敵方がこんな方法を取ってきたのは初めてで、警告もできなかった。
ゲートから走って出てくる医療部隊の面々に超重症(私たちで言う戦線崩壊)のAさんを託し、私は気を失っているだけらしい方條さんを抱き上げる。未成年の少女らしい華奢な体だ。
この子より幾分か身長があるとはいえ、彼女が辛い決断をして剣を取ったのは間違いないはずだ。時折とる連絡では、学校生活をとても楽しんでいたようだから。
あの怪我では、もう神降ろしを早めるしか…
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トイプードル - わー！コメント嬉しいですありがとうございます！これからも更新続けていきますので暖かく見守ってください！ (2019年4月2日 7時) (
レス) id: 3116b53546 (このIDを非表示/違反報告)
十六夜 - 続きが楽しみです！これは、みかつるの予感がありそうで嬉しいです！続きが楽しみです！更新、頑張ってください！ (2019年4月1日 13時) (レス) id: 625c8539c6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：トイプードル | 作成日時：2019年3月25日 12時
