全ての始まり〜幸せの崩壊〜 漆 ページ21
首元に意識を集中させる。ほのかに熱くなったことから、今4枚目に色が灯ったはずだ。
たった5分なのに酷く長い。
もう何かを考えることをやめて、私たちは走って走って走り続けた。
すでに周りの景色は見覚えのないものに変わっているし、どれだけ遠くに来てしまったのか分かったものじゃない。
逃げるのに必死だった私は、ここまで来たのに、住宅地なのに静まり返っていて人っ子一人見当たらない異様な光景に気がついていなかった。
「はっ…はッ」
優希はもう限界だ。1度足を止めたらもう立ち上がれないだろう。でも抱き抱えると速度が落ちるし…！
そう考えていると、さらなる絶望が私に訪れた。
目の前に立ちはだかるのは2mほどある壁。周りも同じ高さのものに囲まれている。
後ろからは化け物が歩み寄ってきており、まさに絶体絶命。
袋小路に追い込まれてしまったらしい。
立ち止まったことで優希は気を失い真っ青な顔で倒れ込んでいるし、私も剣道に手を出したとはいえ真剣の扱いはほぼ初心者。
でも、やるしかない…！
現れた刀を握りしめ、さらに集中。
どんどん視界がクリアになり、刀の重さをほとんど感じなくなる。弾んでいた息も落ち着いた。胸元では桃色のさくらが揺れている。
「さあ、大部隊の始まりです！」
声を張り上げると、その声をたたきつぶすように刀を振られる。そしてそれを飛び越えるようにして反対側へ着地した。
とにかくこいつの意識を優希からそらさないと！
「遅いですね！」
意識は研ぎ澄まされていて、攻撃もギリギリ視認できる。刀も気がついたらさやから抜かれていて、きっちり構えられていた。
そこで気がついたけど、服も変わっている。クリーム色のスカートから、白い和服へ。同色のブレザーは同じく白い羽織に変わっていた。足元は厚底の具足で、鎧のような部位もついている。
でもそんなことを気にしている場合ではない。
避け損なったのを刀で受け止めるとぎゃり、と嫌な音を立てた。
後ろに飛び退いたけど、手が少し震えている。接近戦ではかないそうにない。
今はここから離れないと…
しかし、とうとう化け物に優希を守るため遠ざかっていたことがバレたのか、化け物は赤く光る目の色を暗くして私に背を向けた。
背を向けられるという奇襲のまたとない機会なのに、私ではこの首を落とせない。そんな現実が何故かよぎる。
そして、私が一歩踏み出すより早く化け物は刀を振り上げて──
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トイプードル - わー！コメント嬉しいですありがとうございます！これからも更新続けていきますので暖かく見守ってください！ (2019年4月2日 7時) (
レス) id: 3116b53546 (このIDを非表示/違反報告)
十六夜 - 続きが楽しみです！これは、みかつるの予感がありそうで嬉しいです！続きが楽しみです！更新、頑張ってください！ (2019年4月1日 13時) (レス) id: 625c8539c6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：トイプードル | 作成日時：2019年3月25日 12時
