全ての始まり〜幸せの崩壊〜 壱 ページ15
そのあとの話は、何も頭に入らなかった。厚いガラスで隔てられたみたいに全てが他人事で、耳を右から左へとすり抜けていく。
そして、気がついたらそこは自分の部屋だった。
窓から見える空はオレンジに染まり始めていて、相当な時間が経っていることが分かる。
ふと端末を見ると、山姥切さんからの謝罪と優希からの連絡が届いていた。
誰とも話したくなくて画面を消そうと思ってけど、指が滑って優希とのメッセージに既読を付けてしまう。
『A、だいじょーぶ？先生から風邪ひいたって聞いたよ〜！(・ω・`)』
学校には今日休んだ理由が陰陽寮経由で伝わっているはずだ。不思議に思って山姥切さんとのメッセージボードを開く。
『今日は一番大切なことを伝えてなくてごめんなさい。』
『せめてものお詫びに…なんて虫のいいことは言わないけど、学校へは霊力検査の再試だと伝えておきました。』
『大切な友達がいるんでしょ？彼女には知られたくないかと思って』
目頭が熱くなって、抱きしめていたまくらに雫が落ちる。
「私」のことを大切にしてくれる人はいる。全てを捨てても、山姥切さんとの縁は切れないし、優希だって、私の事を忘れないでいてくれると思う。
私は優希に負の感情を抱かれることなんて、少しも想像してなかったことに気がついた。
『ありがとうございます。今日はご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした。』
それだけ返して画面を優希との物に切り替える。
『ご心配をお掛けしてすいません。明日は学校にいきますよ。明日会えるのを楽しみにしていますね』
ピコン
すぐに既読が付いて返信がかえってきた。
『ホント！？よかった〜ε-(´∀｀*)ホッ』
『寂しかったんだよ！！』
『明日、今日の分のノート見せるね！』
『そういえば、今日数学の〇〇先生がさー？──』
他愛のない会話。愛すべき日常。
意識したこともなかったけど、私にはこの日常を守る力がある。それを急に実感してたまらない心地になった。
『あっもう遅いね？』
『体調悪いなら早く寝た方がいーよ！』
『じゃあまた明日！おやすみ〜(๑˘ ˘๑)*.。』
そんなメッセージと共に端末は沈黙し、部屋に浮かんでいたスクリーンも消えて部屋が暗くなった。
明日、優希にお礼を言わなくちゃ。
…まだ、全てを伝える勇気はないけど、まだ時間はあるんだから。
私の唯一無二の友人に感謝を──
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 68人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
トイプードル - わー！コメント嬉しいですありがとうございます！これからも更新続けていきますので暖かく見守ってください！ (2019年4月2日 7時) (
レス) id: 3116b53546 (このIDを非表示/違反報告)
十六夜 - 続きが楽しみです！これは、みかつるの予感がありそうで嬉しいです！続きが楽しみです！更新、頑張ってください！ (2019年4月1日 13時) (レス) id: 625c8539c6 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：トイプードル | 作成日時：2019年3月25日 12時
