全ての始まり 拾弐 ページ14
「適性者は珍しいですからね。体調の管理は万全にさせて頂いてますよ。」
「はあ…」
「私もそうしてます。適性者しかいないので、身内意識も強いですね。」
アットホームな雰囲気ですよ。
なんてブラック企業の常套句をニコニコ謳う彼女はわざとだろうか。
「ははは、きっとすぐに馴染めますよ。…話がそれましたね。次は重要な話になるのですが…山桐くん。」
「いいえ、それはまだ。」
？まだ彼女が私に言ってないことがあったのだろうか。彼女の表情が一瞬固くなったことから、それが良くないことなのは悟ることが出来た。
「では。16…とは限りませんが、計画への正式な参加が確認され次第、貴女…藤守Aの戸籍は死亡扱いになります」
「…っ！そんな！」
思わず立ち上がる。思ってもみない言葉だった。
「あえて残酷な言い方をしますと、参加が確定した時点で貴女を貴女だと認識できるものは全て消えます。顔、声、体つき…全てに影響を受けるんです。」
山姥切さんが「顔も名前も無くした」そう言っていたのは比喩でもなんでもなかったのだ。そして、私も同じように…？背筋を冷たいものがは這い登る。
無理！無理だ！全部、本当に全部無くしてしまう…！
私は彼女みたいに強くない！
「また、先程お伝えした通り、御両親にも新しい戸籍はお伝えされません。」
「え…？」
思考が止まる。胃の中身がせりあがってきて思わず口を押さえた。そうでもしないと、胃の中身だけでなく悲鳴を上げてしまいそうだった。
信じられないような気持ちでお父さんを見やると、気まずげに目をそらされる。確定だった。
両親に売られた。
その一線だけは超えないと思ってたのに。
…愛されてるって、心の底では信じてたのに！
「Aはその方が幸せになれる！国を救う英雄になれるんだぞ！」
わざとらしい身振り手振りでする言い訳。
せめて、真摯に目を見てくれたらよかったのに。私は、若い頃の過ちの象徴でしかなくって…
もう、涙すら出なかった。
今すぐにでも消えてしまいたかった。
あと3年もこの人たちと暮らすなんて、反吐が出そうだった。
今となっては、すぐに「藤守A」を捨てられないことが憎らしくて仕方なかった。
「そうよ！娘だもの。私達も誇らしいわ！」
ニコニコ笑む母。
きっとこの人には私の顔は初めから見えてなかった。
この人にとって私は「娘」というその他大勢に過ぎなくて、家族という役を振られた顔のない脇役に過ぎない。
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トイプードル - わー！コメント嬉しいですありがとうございます！これからも更新続けていきますので暖かく見守ってください！ (2019年4月2日 7時) (
レス) id: 3116b53546 (このIDを非表示/違反報告)
十六夜 - 続きが楽しみです！これは、みかつるの予感がありそうで嬉しいです！続きが楽しみです！更新、頑張ってください！ (2019年4月1日 13時) (レス) id: 625c8539c6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：トイプードル | 作成日時：2019年3月25日 12時
