MoeMoe part3

傘の日 - 紫 ページ13

「傘、わすれた」









嫌な予感はしてた


いつもより蛍光灯が明るく感じて、こういう時は空が曇ってきているんだ





終業まで間に合わなかった雲から大粒の雨が落ちる








天気予報は見た、ちゃんと

今思えば雨が降ることも知ってた




いつも持ってる折り畳み傘も使ったばかりで干していたから傘を持たなきゃって思って、うん

思っただけだったらしい








天気予報で雨が降ると言っていたこと、
朝から傘を持って出勤しなければって思ったこと、

全部、いま、思い出した



思い出すの遅すぎるだろ自分









「あれ、阿部ちゃんどうしたの？」









大きな傘をさす人、小さな傘をさす人、駅まで走っていく人、を眺めていると声をかけられた



振り向くと傘を持ったふっかがいた

年齢はひとつ先輩の同期









「ふっか、いいもの持ってんね」









「え、あぁ入れてってやろうか？」









「いいよいいよ雨がおさまるまで待つから」









「天気予報見てないの？今から強くなるんだよ？」









それは聞いてない


本格的に帰れないな今日









コンビニで傘を買ってもいいけど高いし、今日また買ったら玄関先の使わないビニール傘が4本目になる

あぁ何回おなじ失敗してんだよ俺









「ほら、いくぞ」









背中を叩かれた反動で一歩踏み出す

歩き始めた歩道は濡れているけど自分は濡れない、大きなふっかの傘に守られている









「ごめん、ありがとう」









「なにが？」









「傘」









「今度おごりな」









「うん、そのつもり」









傘を半分借りてるわけで、傍から見れば相合い傘




なるべく近すぎないように離れて歩こうとするとふっかと傘はついてくる

そのおかげで俺の肩は濡れなくて




ふっかの肩はどうなんだろう







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