54 Watanabe side. ページ6
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Watanabe side.
「い、いや、ちょっとストップっ‥！」
やらかしたんだけど、まじで。
何を口走ったんだ、やばいやばい。
『？！』
「いや、わかる、俺もその顔、ほら。」
俺も同じ顔だとアピールをする、
『いや、えーと、翔太が言ったんやけど、な』
いや、そう。
確かに。
俺から無意識に滑り出た発言には、かれこれ２時間前くらい遡ったあの時間が影響していた。
‥‥‥‥
「翔太いるー？」
講義が終わると同時にババーン！と、扉を開け放って叫ぶ声は佐久間だ。
今日バイト？と、来ていたメッセージ。
もうこのキャラが板についていて、普段は誰も話しかけてくることはないのに、
誰？！と、全員の視線が俺に集まった。
「あ！いたいたー！」
そんな空気を知ってか知らずか、
笑顔で大きく手を降っている佐久間にため息を付きながら早足で講義室を出る。
「おま、うるせーよ」
「だってぇ、翔太見つけられなかったら困るじゃんっ。」
廊下に出て早足で歩き出す。
「で、何。」
「一緒に帰ろーよっ」
え、それだけでこいつ、この騒ぎを‥？
「‥いいけど」
「やーったー！」
なんか恥ずかしい。
阿部ちゃんしかいない大学生活。
でも３年にもなれば当然違う講義が出てきて、週2回くらいしか会うことがなくなった。
誰も寄りつかない、
誰も寄せつけないようにしているのが当たり前の自分に、周りを気にせず声をかけてくるやつがいるって、
ちょっとだけ、嬉しくて。
でもどうにも素直になれない自分がいた。
「やなぎんいるかなー」
「‥」
「連絡してみよー」
佐久間って、本当に柳と仲良いよな。
素直に会いたそうにするのも羨ましい。
「あー、バイトかー」
なんだ、がっかり。
「あれ、翔太がっかり？」
「えっ、」
「なんか顔に書いてあった、あ！行こう、バイト先っ」
「な、なんでだよっ、」
「なんでって普通に、
飲みに行こう？今日忙しい？」
「いや、忙しくない、けど」
こうして、俺たちは雨の中シーフードStyleに向かった。
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作者名：rinao | 作成日時：2024年3月23日 20時
