6 ページ6
.
「柳ー、あがってー。お疲れー」
厨房から声がした。
『よっし、おつかれー!』
「おつ」
「お疲れ様ー。」
店長の声かけで解放されたわたしは着替えに戻る。
10時20分かー。
今日はファミリーが多くて、みんな短時間が多かったから助かった。
結構早い時間やし、帰って、動画でも見ながら資料作りたい。
そう思って、
店のドアを開けると、商店街の真ん中においてあるベンチと植木の向こう側、つまり向かい側の店の扉がほぼ同時に開いたのが見えた。
あそこって、カフェだっけなあ。
めちゃくちゃ人気らしい、なんか行列とか出来てる時があるけど、残念ながら一度も行ったことがない店。
何気なく開いた扉を見つめていた。
『‥えっ、』
「‥あ」
『渡辺翔太‥?』
「‥」
そこには渡辺翔太がおって、
わたしと全く同じ感じで、わたしを見ていて。
あんまり喋りたくないけど知り合いだからな‥。
『お疲れ、バイト?』
「そうだけど、何?」
なんやねん、
『な、何って。知り合いやったら挨拶もするし、いたら普通に聞くやろ。』
「いや、偶然とか普通ある?
お前もどうせ写真とか狙いだろ。ゼミも狙ったわけ?」
狙い?って何?
『はっ?‥自意識過剰やろ』
「は?」
『いや、どんな目にあったか知らんし、氷の王子とか呼ばれてなんか不憫やなあ、位には思ってたけどな。
みんながみんな良いと思ってると思うなよ、アホ!!
少なくともわたしは!タイプじゃないし、ほんでもって性格悪すぎるやつを狙う筋合いもないわ!』
「な、‥!」
『お疲れ!!!』
そう言って家の方に向かってずんずん歩き出す。
昨日から態度は悪いなと思ったけど。
まさか自意識過剰の方だったなんて。
まあ、確かにかっこよいとは思うで。
適度に遊ばせた髪の毛にフープピアス、
鼻筋と白い透き通った肌、甘い目つき。
多分黙っていても女子は寄ってくるやろな、
でも!
まじであんな性格悪いやつに会ったことはない。これだけは断言出来るわ。
193人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:rinao | 作成日時:2024年3月1日 9時