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Watanabe side.
三日目の作業。今日が最終日。
去年の俺なら、誰かと泊まって長い時間を過ごすなんて考えられなかった。ましてや女子が同室なんてもっての外で。
「な〜渡辺ー。俺、翔太って呼んでいい？」
「お、おう、いいけど。」
こういう、俺の持つイメージとかで線を引かないやつが居てくれるおかげなんだろうな。
「やーったー！やなぎんに自慢しよっ」
「‥佐久間って、柳と仲良いんだ。」
「え？普通じゃん？
それで言うと、翔太も仲良いじゃん。」
「え」
佐久間は当たり前みたいな顔して俺に言った。
そうなのか？そう見えているのか？
「うーん、だって翔太が言ったことがちゃんと伝わって、やなぎんの言うこともちゃんと聞くでしょ？
それって仲良いってことだろ？」
「そっ、か‥」
そんな当たり前なこと、
でも、
一方的に付き合う流れに持っていかれたり、一方的にものを押し付けられたり、噂になったり、誰かと少しでも近づくと良くないことが起こったり。
当たり前が当たり前じゃない俺の世界では柳みたいな人は珍しくて。
どれも俺の意見を無視した世界で執り行われてきたことが、このゼミにはいってからは明らかになくなってた。
俺、柳の前で自分の意見を言っても良いんだ。
柳の話も興味を持って聞いてもいいんだ。
佐久間の発言には俺にとってたくさんの意味が込められていて。
「翔太。やなぎんは多分大丈夫。あと、俺らも。」
「‥ありがとう、」
同じ方向を見ていて、目が全く合ってないのに、
こんなに安心することがあるんだな、って。
「俺、変れんのかな‥」
「あの、声に出ちゃってるけど、大丈夫？」
覗き込む佐久間に、自分の発言が頭の中で巻き戻されて流れてくる。
「へっ、声に出てた？！」
「うん。結構はっきり。」
「っはっず！」
「あっは！翔太おもれー！」
「おい、馬鹿にしてんだろ」
「してないしてない、やなぎんに報告〜」
「や、やめろ！」
「冗談、イタタタ！！ストップストーップ！」
小学校低学年以来、
初めて取っ組み合いみたいなことをして。
佐久間のバカでかい声でみんなが入ってきて、笑われて。
あぁ、なんか。
雪貞ゼミで良かった。かも、なーんて。
良かった。って単語すら久々で、少し頬が熱くなるの感じた。
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作者名：rinao | 作成日時：2024年3月1日 9時
