43 Watanabe side. ページ44
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Watanabe side.
ガチャ、と扉が開く。
お風呂上がりの柳が入ってくる音がした。
ベッドの足元を通るとふわっとシャンプーの香りが漂ってきて、まだ姿を確認していないのにいるのがわかって、ドキッとする。
気づかれないようにスマホから視線をずらしてチラリと見ると、
全くこっちを気にする素振りもなくて、興味すらなさそうで。
「‥ドライヤーいる?」
つい、自分から声をかける。
『うんっ、ありがと、助かるー、
てかそのドライヤーめっちゃ良い。朝めっちゃまとまってた!』
そこではじめて目が合うと、
何、すっぴんの笑顔めっちゃ可愛いんですけど。
「そ、そう?」
素っ気ない返事をしつつ、
これまたつい、ドライヤーを持ってドレッサーの前に移動する。
昨日を思い出して察したのか、
『え、自分でやるよ、昨日は寝ぼけてたから申し訳なかった、ほんまに。』
「ん。」
椅子を指差す。
『え‥じゃ、じゃあ‥?』
めっちゃ戸惑っている柳。引き下がらない俺に、多分なんだこいつ?くらいには思ってるだろうな。
ブオーンと音を立てて、半ば無理やり座らせた柳の髪にドライヤーを当てる。
柳の髪ってめっちゃ柔らかくて、乾かしてるこっちがハマるくらいには気持ち良い。手櫛っていうか、もはや撫でたくなる。
でもそれやったらやばいから、かろうじて我慢する。
もう、俺。自分のキャラがよくわからない。
柳に対する興味が湧いているからなのか、
目を閉じて、椅子の上で体育座りをする柳を見ながら先程のことを思い出していた。
‥‥
お風呂を上がると、ベランダのカーテンが開いていて。
さっき俺が閉めたはずのカーテンが何故?と、近くに行ってみると、話し声が聞こえて立ち止まる。
阿部ちゃんと‥
柳?
なんで?
ふたりってそういう‥?
なんか少しモヤッとした気分。
別に俺に関係ないんだけど。
“‥確かに、翔太が人気あるのはわかる、初めて見た時、びっくりした。
やけど、急に色恋になることはないとも思う。もしも好きになるなら、ちゃんと中身を見て好きになりたい。
だから、阿部ちゃんが心配するような危害はないと思う、もしあったら叱ってほしい。”
柳は言葉選びながら、でも自分の気持ちを阿部ちゃんに話しているようだった。
これは‥俺の、こと、だよな?
阿部ちゃんが心配して、柳に何か言ってくれたんだろうと察した。
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作者名:rinao | 作成日時:2024年3月1日 9時