37 Watanabe side. ページ38
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Watanabe side.
『‥軽くなりますように‥』
「え」
すごく近いところで響く柳の声にびっくりして目を開ける。
夢か、現実か、よくわからない狭間にいて、
そこには頭をあげる柳。
手を小さく合わせている。
え？
今、拝まれてた‥？
焦りだす柳の反応から、現実だと気づく。
とにかく近い距離で、チューでもされるんかと思った。
いや、柳に限ってそれはなさそう。
だって、柳ってまじで俺に興味がない。
今まで誰にも興味を持ってほしくなかった俺だけど、柳が1ミリも興味なさそうで、それはそれでなんか嫌だった。
「なあ、阿部ちゃん。」
「何？」
「軽くなりますように、ってお願いしてたらなんのことだと思う？」
「え、ちょっとよくわからないんだけど、状況とか。」
「いや俺もわからん」
「何、夢の話なの？」
「まあそんな感じ。」
ゆっきーのデータをグラフに起こしながら質問する。
「うーん、軽くってなったら、ダイエットかなあ。」
「ダイエット…」
俺の顔見て言うかなあ、柳も結構細い方だと思うし、それは違うかも。
「他には？」
「他？！わからないのに？！」
「いやーわからないよな。」
「あ、じゃあこういうのは？
気持ちが、軽くなりますように、みたいな。」
気持ちが‥か。
俺の、気持ちが？
柳の気持ちが？
どちらが軽くなるんだろう‥
でも、
「‥それはありかも。」
「あ、ありなんだ。」
「いや、わからん」
「めっちゃ不毛な会話になってるね、今。」
あべちゃんの言う通り、
とてつもなく不毛な会話。
本人に聞けば終わる話だけど、
話しかける方法がわからない。
柄にもなく、
改めて話しかけるのって緊張するかも、
とか考えながら、打ち込みの作業を続けた。
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作者名：rinao | 作成日時：2024年3月1日 9時
