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Wstanabe side.
ブォォォン‥
ドライヤーが勢いよく稼働して、ベッドに体育座りをしている柳に風が当たる。
「熱すぎない?」
『‥ん、快適やで。』
「そ。」
手ぐしを通すと、切りっぱなしのボブがサラサラと舞う。
きれいなミルクティーベージュ。
「柔らかい。」
しまった、声に出してしまった‥!
『うん。だからすぐうねる。』
「ちゃんとドライヤーしろよ。」
俺の言葉に
柳が急に振り返る。
『してるでっ!今日だけやもんっ』
「わ、わかったからっ!」
近いって、距離感わかってんのか?こいつ。
肌も透き通るように毛穴がない。
「なあ」
『ん?』
髪が乾いてドライヤーを止める。
俺の呼びかけに、体の向きを逆にして、再び体育座りをする柳。
「‥化粧水、どこの?」
『あー、なんか地元の』
「大阪?」
『うん、こっちに店舗ないっぽいで』
「へぇ」
『いる?サラあるで。』
「サラ?」
『あ、新しいの。』
「いいの?」
『ドライヤーのお礼っ。気持ちよかったわ。寝そうになったもん。』
「さっき大の字で寝てたけど?」
『えっ!ほんま?!恥ずかしっ!』
「いや、かわ‥あ、えと、」
『かわ?』
「いや」
『川だったら人足りんで。翔太寝ても二本やしな?』
いやそっちじゃない!
けど、危なく可愛いと言いそうになった俺。
「ふはっ、柳っておもしろっ」
『それはなんかちゃうやつ、イジってる?』
「イジってないイジってない!」
『ほんまかなぁぁ?』
「ね、寝る!」
『あっはは、翔太が一番おもしろいっ!
また明日も喋ろ、おやすみ。』
人生で初めて言われた、おもしろい。
お世辞かも、冗談かも。
それでも、中身のことに触れてもらえた嬉しさが、
俺の7年の防波堤を難なく越えてこようとしている。
「おやすみ。」
柳のこと、もう少しだけ知りたい。
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作者名:rinao | 作成日時:2024年3月1日 9時