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そんなに口数は多くないけれど、
会話をするのが嫌という訳ではないらしい。
そこんとこ、あの威嚇の印象から
おハルも、
そしてわたしも想像出来ていなかったと思う。
「‥このパン、うまっ‥！」
『やろ。ハンバーグの中にゆで卵入ったサンドなかなかないやんな。』
この通り、聞き取るのにギリギリな声で、最大限のリアクション。
「んっ。どこふぇはっふぇんふぉ？」
『食べてから喋ろう？
うちから3分くらいのとこ。マーメイドってパン屋さん。』
「‥ふぉーん。」
バケットハットで表情はあんまり見えないけど、喋るたび肩が揺れたり、頷きが多くなったり。
なんかしらのアクションつき無音リアクションが見られる。
「‥こんな喋るんだね。
いつも不機嫌なイメージあるから驚きが隠せないんだけど。」
『いやほんまに。』
「Aも知らんかったんかい。」
『知らんよ。』
寧ろ知り合って急激なキャラ変に焦ってる。
「‥俺も。」
「あっはは、めっちゃ面白いじゃん、渡辺っ。」
今、楽しいんかな。
大学生活なんて、
行事にサークルに、友達からバイトまで
多分、楽しみ方って100通りはある中で。
今までどんな過ごし方してきたんだろう？
昨日まではなんとも思わなかったのに、
少しだけ、翔太のことが気になった。
『‥また来ても良いで。帽子貸したげるし。』
「えっ」
『ね？おハル？』
「うん、来たくなったらどうぞ。」
『でも気配消して。バレたらまあまあ迷惑かかる。うちらに。』
「迷惑って、」
『残り2年平和に過ごしたいから。』
「Aは目黒蓮と喋ってたら結構大変な目にあったもんね。」
『あー、ほんまや。そんなこともあったわ。』
謎の集団に付きまとわれたり色々あった。めめが怒って一掃した去年を思い出した。
「‥目黒蓮って、あの？」
『あの、かどうかはわからへんけど。』
「そうそう。渡辺の次に人気だよね。ストリートスナップとかにも出てたし。」
人気で言えば‥まあ、人気なのか。めめ本人があまりに普通だから気にしたことはあまりなかった。
「‥なんの知り合い？」
『バイト先が同じ。』
「‥ふぅん。」
やっぱり興味ないね。
「あ、そろそろ時間じゃない？」
『ほんまや、行かなきゃ。』
立ってカバンに荷物を入れる。
「ゼミだろ。一緒じゃん、」
『え、まさか一緒に行くの？』
「そりゃそうだろ」
まあ‥いっか。
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作者名：rinao | 作成日時：2024年3月1日 9時
