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「え、お前俺のこと知らなかったの?」
『逆になんで万人が渡辺翔太のこと知ってると思ってんの?』
本人のその反応を見るに、ほんまにびっくりしたんやろな。
「‥確かに。」
『あっはは、あのゼミ発表名簿のところでぶつかったのが初めて渡辺翔太を見た日。
もしかしたらSNSで見たかもしれない、くらい。
ちなみにゼミも、選択ミスで雪貞ゼミに入ったけど、ほんまは伊藤ゼミが良かったし。』
「そう、なんや‥」
『あと、バイトは1年の時からだから、別に渡辺翔太狙いはない。』
「ちょ、ちょ、」
『ん?何?』
「その、渡辺翔太、って何なの?なんでフルネーム?」
『いやわからん。あだ名とか知らんし、勝手に呼んだらなんか怒りそうだし。』
「怒らねーよ!‥翔太かしょっぴー。」
『しょっ?!』
あだな?!
「おい、笑うなよ。」
『あんなムスッとしておいてしょっぴーってぇ!!あっはははは!』
お腹痛い‥!
「お前、近距離だったらしばいてる!」
グーを見せつけてくる。
『しょっぴー‥ぐふふ‥!』
ひっさしぶりに腹の底から笑ったのが、まさか渡辺翔太、改め翔太になろうとは。
「なーんか、久々に女子と喋ったわ。」
『あ、そうなん?』
てか、女子と思ってたんや。そこにびっくり。
「なんか周りから聞いてんだろ?」
『あー、どうやっけな?あんま思い出せんかも。』
風の噂なんて。みんなが言うけど、本人の耳にいれる必要はないと思う。だからわたしは知らないフリをした。
「‥普段、あんまり自由ないから。」
そっか。
少し、しんどいんかな?
めめの言ってたことを思い出す。
‘なんかでもそういう苦労してる人って
幸せになってほしいよな、’
話しながら時折、空を見上げる翔太を見て、心が少し痛くなる。
『じゃあ、たまに自由時間でも作る?』
「え?」
『あ、わ、わたしは翔太を、そういう?なんていうか、男として見ないし?
別に嫌ならいいけ「したいっ」
知り合いになった翔太。
さっきまでは嫌悪感しかなかったけど、
知り合いになったんだから。
『ははっ、早っ』
「‥次は俺が酒持ってくる。」
少しでも心が軽くなるとええな。
『ねぇ、わたし瓶のやつ希望っ』
「お、お前、調子のんなよ?」
『うふふっ、』
この夜、わたしと翔太は自由を共有する友達になった。
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作者名:rinao | 作成日時:2024年3月1日 9時