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そう言ってどこかに消えた渡辺翔太。
これは別ルートで目指せということか？
とりあえず指定された雪坂第二公園へ向かう。
雪坂第二公園は、割と小規模な公園で、グラウンドと遊歩道くらいのシンプルな感じ。
うちから10メートルの立地で、なぜここが選ばれたかわからないけど、帰りはササッと退散できるから良かった。
「おっそ。」
『え、ごめん、』
渡辺翔太が早いのでは？
目的のわからない渡辺翔太が普通に怖い。
「ん。」
このベンチに腰掛けろと言うことか‥？
言われた通り、机と椅子が一体となったよくあるやつの、向かい側に腰かける。
‥
「‥なんか話せよ。」
『いやいや、呼んだんそっちやから、なんかあったんやろ？』
公園内の街灯だけが私たちを照らしていて、無風すぎて、音もなにもない世界にいるみたいな錯覚に陥る。
「‥ない。」
『えっ。』
ないんかい。
じゃあなんなん？！一体？！
『解散する？』
「ま、」
『ま？』
「待って‥」
半分立ち上がろうとした私を
今、多分止めた渡辺翔太。
今までと違うのは、
目を逸らさずに、こちらを見ていたことだった。
『‥うん。』
なんか、ありそうで。
その言葉を待つ。
こちらを見ている渡辺翔太は、この薄暗さでもわかるほど色気がある。
無地の黒いTシャツとチェーンの細いネックレス。
えらい高見えやな。
いや、知らんけど。
「‥見すぎ‥。」
少し目を伏せて言った渡辺翔太が
おそらく照れたということがわかった。
『あ、ごめん。』
「あの、
こないだ、その、ごめん。」
『っ‥？！』
今、謝った‥？
「たしかに、自意識過剰だった‥。ちょっと色々ありすぎて、敏感になってたと思う‥」
『う、うん、
わたしも言い過ぎてごめんなさい。
ほんまは謝るタイミング考えてたんやけど、なかなか言えんくて。』
「俺も。」
『一緒やんっ、じゃあもういいやんっ、仲直り！
あー緊張したら喉乾いた！これ、飲める？乾杯しない？』
「ふっ、仲直りで乾杯って、」
そう言いながらちゃっかり缶を手に取った渡辺翔太の本日二度目の笑顔。
不覚にもドキッとしてしまった。
『笑えるんやな。』
「は？笑えるわ、」
『いつも、顔やばいけど。』
まあ、存在を知ったのは何日か前だけど。と言うと
「え、」
唖然としたように見える渡辺翔太。
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作者名：rinao | 作成日時：2024年3月1日 9時
