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「ね、断わる理由ないでしょ？」
真っ直ぐな瞳に捉えられている。
『で、でも高すぎて…』
「じゃあ！たまに。たまにで良いからカレーご馳走してよっ、まじで美味かったからさ！」
これ以上は埒が明かない気がしたので、たまに、なんて存在するかもわからないけど、了承することにした。
『…わかりました。』
「よかったー！」
『…ありがとうございますっ』
多分自分じゃあ一生買えないかもしれない。せっかくもらったんだから大事にしよう。
『このブランドが好きなんですか？』
「うんっ、これね、Bonheur(ボヌール)って言うんだけど。幸せとか、穏やかな愛、とかそういう意味なの。」
『へぇ。』
「幸せとかって、人によってその重さも温度も形も違うからさ。そういういろんな幸せを大事にしたいな、って。」
『重さ、温度、形。』
なんだか思いあたることがたくさんあった。恋人が出来ても同じ方向の幸せにはならなくて。
さっくんの話で、なんとなくすとんと落ちる自分がいた。
『なるほど。さっくん。なんかありがとう…しっくりきた…！』
昨日今日出会ったような人なのにな。
「そ、それは良かった！ってかそんな顔で笑うんだねっ。」
『どんな顔？』
「い、いや、えーと、すごい顔！」
『え、悪口？！』
ヴーヴー
「あ、電話。ごめん、ちょっと出るね」
『はいっ』
「え？あった？ありがとう阿部ちゃんー！え、ほんとに？！いいの？場所わかる？あ、そうそう〜
え、夜ご飯？食べたー。え、家、あー。いや、入れないから家ではない。
隣。え？！うん、隣の家。大丈夫大丈夫！うん、なんか知らないっぽい。
いやいや、大丈夫。え？！確認？
えー、ちょっと待って、Aちゃん。」
『はい。』
会話は聞こえないけど、明らかにその阿部ちゃんが私を警戒していることは伝わる。普通、雨降っても隣の家にはいかないもんね。
「今から阿部ちゃん来てもいいかな、鍵届けるついでに会いたいって」
『なんで？！』
来るのは想定外でした。
「ちょっと過保護なのよね。」
『過保護…？
…大丈夫ですよ。阿部さん、カレー食べますか？まだありますけど。』
「あ、阿部ちゃん？カレーあるって！待ってるねー、じゃ。」
「ごめんね、急に！」
『いえっ、鍵あったなら良かったですねっ』
「あー、でも阿部ちゃん、
‥まあ、しゃあないか…」
『え？』
「いや、こっちの話っ。」
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作者名：rinao | 作成日時：2024年1月19日 5時
