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『お風呂どうぞ。ちょうど沸いたみたいです』
「ぇえ？！さすがにそれは悪いよ！」
『んー、そんな濡れてたらずっと玄関にいなきゃいけなくなりますから。はい、これ、タオルと上がったら‥あ、これ新品です。』
わたしが働いている下着メーカーのジェンダーレスラインの部屋着。試作品を持って帰ってきていたのがあったから良かった。
「ありがとう、じゃあ有り難く借ります！」
『濡れたやつは洗濯機に入れてください。』
「はい、お願いしますっ」
ペコリと会釈をして、お風呂に向かう佐久間さん。
『…いらんことしたかな…』
いや、でも！
あんなずぶ濡れだったら流石に風邪ひくし、鍵もなかったら濡れたまま引き返すのは流石に…
カレーをかき混ぜながら考える。
なんだか周りを警戒している感じだったし、事情はよくわからないけど、とりあえず距離を取りながら会話しよう。
ガチャ
「…お風呂ありがとう〜、めっちゃ良い香りの入浴剤だねー！」
『わ、わたしの働いている会社のやつで。』
「えーっ、え、もしかして“Breath”？」
『そうですっ、』
「このパジャマも？」
『そうですっ！ジェンダーレスラインが出来た時の試作品で。』
「すごい滑らか〜、めっちゃ良い！気になってはいたんだよねー」
『ありがとうございますっ！担当しているので嬉しいですっ！』
視線をカレーから佐久間さんに向ける。
そこまで高くはない身長だけど、身体がしっかりしているように見える。
今までお風呂あがるまでの３回、ずっと帽子とメガネで防御されていた顔面周辺も露わになっていて。
『綺麗』
きれいなピンクの髪の毛はまだ少しだけ湿っていて。
透き通るように白い肌、伏し目がちな表情からもわかるくらいに大きくて、何よりめちゃくちゃ小顔だ。
「え、」
『あ、そんなピンクの髪の毛初めて見たので！
Maison雪坂の庭も春になったら桜が咲くんですけど、その桜みたいな綺麗な色だなー…あ、すみません。桜に例えられても、ですねっ』
髪の毛だけじゃない、
あまりにも綺麗で儚い佐久間さんに、ドキッとしてしまったのだ。
「あ…あー！髪の毛ねー！テレビとかでもあんまり見ない？」
『え、ピンク頭って流行ってます？コスプレの世界だけかと思いましたっ、佐久間さんはそっち界隈の…？』
「あーうんっ！アニメ好きっ、そっち界隈かと言われたら微妙なところだけど。」
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作者名：rinao | 作成日時：2024年1月19日 5時
