42 ページ42
.
Sakuma side.
わぁあああ‥!
本当に俺は何をやってるんだ!!
ラウールはあのあと、姫野さんと喋れたー!と、嬉しそうにみんなに報告をしていて。
俺が邪魔してしまったことはあまり気にしていなさそうだったけど、10歳近く違う子を相手に情けなくなった。
Aちゃんは、
どう思ったんだろう。
撮影が終わってから、Aちゃんに会うこともなく、俺は次の現場へ。
今日も日を跨ぎそうだなあ。
日を跨ぐときには、基本的にビジネスホテルに泊まっている。後からついてきた時、夜中だと周りの人に迷惑をかけてしまうかもしれないし。
こうしてあまり熟睡できない日々をずっと過ごしてきた。
でも、自分ちはなるべく怖いと思う場所にしたくないから。
といっても引っ越して一ヶ月。ほとんど荷解きも出来ていなくて。ベッドとソファ。それとコップをひとつ出しているだけだった。
ヴーヴー
「はい。あ、阿部ちゃん?」
“佐久間ー、もう今日終わり?”
「今日はね、あとひとつあるのよ、どうした?」
“いや。どうしてるかなあ?と思って。”
「えっ、何?阿部ちゃんが可愛い」
“大丈夫?寝れてる?”
「うーん、まあぼちぼち?」
“ぼちぼちってことは寝れてないね?”
「まあ、今日は泊まるから、ホテル。大丈夫〜ありがとう〜」
“あ、そうだ”
「ん?」
“あのさ。”
「え、何?」
“佐久間が本当に誰かを大事にしたいと思ったらさ。”
「うん」
“自分の不安や、勝手な思い込みじゃなくて。素直に。佐久間の自分の気持ち、大切にね。”
自分の気持ち、か。
阿部ちゃんにだって言っていないこの気持ちは、もしかして、阿部ちゃんに伝わっているんだろうか。
もう少しだけ、Aちゃんに近づいても良いのだろうか。
「阿部ちゃん。ありがとう。」
“ちゃんと家片付けなよ。”
そう言って、阿部ちゃんは電話を切って、俺は次の現場に入る。
182人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:rinao | 作成日時:2024年1月19日 5時