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Sakuma side.
「佐久間、今呼ばれたわ」
「ありがとう、行ってくるー」
散々ひとりで葛藤していたらあっという間に時間になっていた。
別室でヘアメイクをしてもらう。
自分にできることは、Aちゃんに迷惑をかけないこと。
それから格好良いところを見せること。
しかし、その誓いはすぐに揺らぐ。
「あの、めっちゃファンです！！！」
スタジオの入り口に差し掛かった時、ラウールの声が聞こえてくる。
「あのラインのキービジュアル見て、いつかBreathのモデルやりたいってずーっと思ってました‥！」
「しかも初めて見た姫野さんが綺麗すぎて‥！」
ちょ、ほぼ告白じゃん！
Aちゃんは背を向けていて、なんて返答しているかは聞こえない。
「ラウ。」
思わず、呼び止めてしまう。
「あ、佐久間くん。」
急にかけた声によってふたりの会話は終了して、ふたりともがこちらを見る。
Aちゃんもびっくりした顔をしている。
「めめが探してた。早く行ってあげて〜？」
ごめん、ラウール。大人気なくて。
『さ、佐久間さん、よろしくお願いしますっ』
「よろしくお願いしますっ」
不意にかけられる挨拶にもドキドキする。
仕事場でのAちゃんに名前を呼んでもらって。
できるだけ笑顔で返したいけど、
ラウールともっと話したかったかも。とか考えるとうまく笑うことができなさそうで、
貼り付いた笑顔になってしまう。
すると、少しだけ寂しそうな顔をしたAちゃんが笑う。
セットに移動すると、カメラマンさんからは
「もうちょっと、はだけられますかー？
「いやー！いい身体！脱げます？」
と、煽られ、自分ができる範囲セクシーな表情を心がける。
「ありがとうございましたーっ」
無事に撮影が終わると、こちらに歩いてくるAちゃんとすれ違う前に立ち止まる。
「お疲れ様でしたっ」
軽い挨拶を交わす。
「A〜！袋ー！」
呼ばれた方向に目をやれば、
めっちゃイケメンがいて。
俺に頭をペコリと下げ、遠くで叫ぶそいつの方へ向かおうとするAちゃん。
「あ、」
『えっ、と』
思わず、腕を掴み、引き止める。
手が勝手に。っていうのは違うけど。
はっ！と我に返り、すぐ手を離す。
「あっ、すみません！」
すぐAちゃんに背を向けてスタジオを出る。
‥間違いなく。
やらかした。
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作者名：rinao | 作成日時：2024年1月19日 5時
