40 Sakuma side. ページ40
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Sakuma side.
「あー‥。」
俺やっちゃった。
手のひらに残る、自分より細くて柔らかい腕の触感。
馬鹿じゃん。
始まる前に終わるじゃん。
控室までの廊下を、自分に対する嫌悪感いっぱいで歩く。
―――――――遡ること3時間前。
撮影が進み、お昼の時間になり、
控室で弁当を食べ始める。
「なあ、Breathの社員の人。めっちゃきれいじゃない?姫野さん。」
めーっちゃ繊細な作りしてんの!びっくりした!と、ふっかが騒ぎ出す。
「ほんとに!俺、思わず話しかけてしまった。」
え、めめが女性スタッフさんに話しかけた?
本当に珍しいことに驚くと同時に、焦りとか不安とかが押し寄せてくる。
「やめろよ、そういうの」
とりあえず、そう一言。絞り出してみたものの。
とくにみんなが俺を気にすることなく話は進む。
「でも確かに、束ねてるけどめっちゃ髪の毛キレイだし。なんかいい匂いした。しかも、俺の声美声って言ってて。Snow Man知らなかったらしい。知らなくて美声とか言われたらやばいよな!」
まあ、立ち話聞いちゃっただけなんだけど。と、翔太。
「えーっ!今から撮影楽しみなんやけどっ!」
「姫野さん、さっきマネージャーさんが言ってたけど、BreathのGreenラインの人らしい!」
ワクワクしている康二に被せるようにしてラウールが興奮した状態で話し出す。
「それ、ラウールがずっと言ってた人じゃん!」
「そう!声、かけても迷惑じゃないかな?」
「あれ?佐久間、どこ行くの?」
「トイレっ」
これ以上、ここに居たらなんか余計なことを言ってしまいそう。
「悪いもんでも食べたんか?顔色悪っ」
「大丈夫。」
本当は、俺知り合いなんだよー!家も隣で!って言いたい。けど、Aちゃんに言ってもいいか聞いてないし。
俺も、俺だけの秘密にしたい気持ちがあって。
コンコン
「向井さん、準備お願いします。」
「あいよー!」
別に俺の、何でもないのに。
メンバーにかなうところがない、勝手に考えてしまう。
そもそも誰にも言ってないし。
阿部ちゃんしかAちゃんの存在知らないし。
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作者名:rinao | 作成日時:2024年1月19日 5時