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さっくんが明らかに変だった。
出会ってまだ1ヶ月くらい。
さっくんの深いところまでは、正直わからない。
でも、時より見せる何とも言えない表情。
寂しそうな？泣きそうな？
違うな、
それすらもわからないんだけど。
‥なにか困ってることがあるの？
急いで片付けを済ませて、勢いよく出口を通る。
そして立ち止まる。
『あー、だめじゃん』
‥連絡先知らないわ。
わたしたちを繋いでいるのは、Maison雪坂＊だけで。
やはりそれ以上でもそれ以下でもなかった。
今までのわたしなら。
…それなら仕方ない。と、少し落ち込んで帰るだけだと思う。
色々考えながら家路を急ぐ。
門をくぐり、長い庭を抜けて。
101号室のインターフォンを鳴らす。
ピンポン
『いない‥よね』
そりゃあ、そうだ。
相手は超人気のトップアイドル。簡単に会えるわけないよ。
部屋に入り、ソファにぐでんと座り込む。
『‥あ』
そうだ。阿部さん。
『よし。』
画面をタップするとコールが鳴る。
“はい”
無機質な電話の声。
『あの、阿部さんですか？姫野です、さっくんの隣人の。』
“あぁ！ど、どしたの？”
斯々然々。
さっくんの様子や出来事を掻い摘んで話す。
『わたし、ただの隣人ですけど。
なんかやっぱり放っておけなくて。
なんでかわからないんですけど。』
“‥そっか。
姫野さん。佐久間を大事にできる自信ある？”
それって、友達、
あ、いや、隣人として、だよね？
阿部さんのトーンにはもう少し色がついている、
なんかもう少し進んだ関係のことを指すような言い回し。
『‥わたしなりので良ければ。』
隣人なら隣人として、
友達なら友達として、
わたしにとってさっくんは、もう自分のパーソナルな部分に少しだけ入る人になっている、気がする。
“じゃあ、佐久間がまた家に行ったら、たくさん甘やかしてやって？”
『甘やかす‥とは？』
“よしよし。って”
『よしよし‥。うーん？わかりました。』
“うちの佐久間をよろしく。”
『はい。』
そうして電話は終わったけど。
結局なんにも解決してなくない！？
阿部さんの良い声で癒やされただけの時間となってしまった。
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作者名：rinao | 作成日時：2024年1月19日 5時
